2009年9月16日水曜日

逆風の中で:第6部・働き方の選択/1 市民ランナー指導

(毎日 9月8日)

96年アトランタ五輪の陸上女子五千メートルで
4位入賞を果たした志水見千子さん(38)は、
横浜市都筑区で、妹とともに
「FUN★COME」というカフェを経営。

実業団のリクルートで、主将としてチームをまとめ上げた経験を持つ。
華やかな競技歴とは裏腹に、現役時代は、ある劣等感を。
「私は走ることしかできないのかも、と思っていた。
一般社会とは別世界で、『勉強のない部活動』として陸上をしている」

競技に専念できる環境は整っていたが、
一方で社会と切り離されたような気持ちも。
「引退後」を具体的に考えるようになったのは、
競技生活の後半に差し掛かったころ。

脳裏をよぎったのは、米コロラド州ボルダーでの高地合宿。
一人になれる限られた時間を、カフェで過ごした思い出と、
「引退後は、のんびり暮らしたい」というイメージが重なり合った。
01年、リクルートを退社、カフェを開いたのは04年。

小さなカフェが出会いの場となり、
「もうかかわることはない」と思っていた陸上の、
新たな魅力を発見することに。
お客さんを介して、「ランニングを教えてほしい」と打診、
個人指導を始めたのがきっかけ。

08年、ランニングクラブをつくり、本格的に市民ランナーを指導。
ランニングブームという追い風もあり、
現在はクラブ運営に仕事の重点は移っている。

プロ的なアスリートが増えた今、引退後の
「セカンドキャリア」はスポーツ界の大きな課題。
日本オリンピック委員会(JOC)は08年、
「キャリアアカデミー」をスタート。
進学や就職に関する相談を受け、セミナーや交流会を実施。

アカデミーの八田茂ディレクターは、
「経済環境の悪化は気になっていると思うが、
現役選手が最優先するのは、やはり成績を残すこと。
所属チームによって、雇用形態にも違いがあり、対応は難しい」

「引退後のことを具体的に考える選手は、確かに少なかった」と
振り返る志水さんは今、市民ランナーたちとの触れ合いを通じ、
「純粋に『走ること』に取り組んでいる。だから楽しい」

現役時代には感じられなかった社会との接点。
そこに、第二のスポーツ人生の生きがいを感じている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/09/08/20090908ddm035050125000c.html

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