2009年9月19日土曜日

逆風の中で:第6部・働き方の選択/4 昇進重ねる元強打者

(毎日 9月11日)

パナソニック本社。
常務役員の鍛治舍巧さん(58)の部屋には、
プロゴルファー、石川遼(17)のサイン入り写真が飾られている。
「実はメル友なんです」と、鍛治舍さんは照れながら言う。

昨年1月、石川が松下電器産業(現パナソニック)と所属契約した際、
担当役員として発表記者会見に同席。
その時から、世代を超えたメール交換は続いている。

県岐阜商高時代に甲子園を沸かせ、早大でも強打者として活躍。
「一度しかない人生、野球以外にも自分の可能性を残しておきたい」
と、プロ球団の誘いを振り切り、74年に松下に入社。
現役の7年間は午前中勤務後、午後から夕方まで練習。
その後会社に戻り、夜9時ごろまで仕事。

「午前中と時間外で、日常の仕事がほぼ回せた。
引退後もスムーズに仕事に入れた」と鍛治舍さん。
87年、監督に就任、5年間指揮を執った。
91年、採用部教育課長となり、昇進を重ねてきた。

世界的なIT不況により、業績が悪化した01年、
労務を管理する労政部長として、早期退職優遇制度導入に。
創業者の松下幸之助氏が、「雇用確保の最優先」を
掲げていただけに風当たりも強かった。
「松下が初めて人に手をつけるのか」と言われた。
予想を上回る1万3000人が応募。
その後、業績はV字回復を果たした。

当時、人事部長で、現関西国際空港会社社長の
福島伸一さん(60)は、「スポーツで鍛えられたリーダーシップ、
最後まであきらめない情熱が下地になり、決断力、統率力、
状況を見る視野の広さにつながっている

現在は、コーポレートコミュニケーション、
CSR(企業の社会的責任)担当。
野球、バスケット、バレーボールの3部を統括。
野球部は全員、バスケット、バレーも大半が社員で、
引退後は社業に専念するが、企業スポーツを取り巻く環境は、
鍛治舍さんの現役時代とは変化。

競技レベルが上がり、練習時間も長くならざるを得ない。
「今の選手はかわいそう。練習後に会社に戻るのはなかなか…」
昨秋からの不況。
コスト低減は、当然のこととして求められている。

鍛治舍さんは、「組織の多様性を維持するため、
スポーツマンタイプは欠かせない」
「競技に取り組む姿勢で、(引退後)1年間(仕事を)頑張れば
必ず追いつける」
その信念は、自らの経験の上に成り立っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/09/11/20090911ddm035050068000c.html

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