(毎日 9月11日)
パナソニック本社。
常務役員の鍛治舍巧さん(58)の部屋には、
プロゴルファー、石川遼(17)のサイン入り写真が飾られている。
「実はメル友なんです」と、鍛治舍さんは照れながら言う。
昨年1月、石川が松下電器産業(現パナソニック)と所属契約した際、
担当役員として発表記者会見に同席。
その時から、世代を超えたメール交換は続いている。
県岐阜商高時代に甲子園を沸かせ、早大でも強打者として活躍。
「一度しかない人生、野球以外にも自分の可能性を残しておきたい」
と、プロ球団の誘いを振り切り、74年に松下に入社。
現役の7年間は午前中勤務後、午後から夕方まで練習。
その後会社に戻り、夜9時ごろまで仕事。
「午前中と時間外で、日常の仕事がほぼ回せた。
引退後もスムーズに仕事に入れた」と鍛治舍さん。
87年、監督に就任、5年間指揮を執った。
91年、採用部教育課長となり、昇進を重ねてきた。
世界的なIT不況により、業績が悪化した01年、
労務を管理する労政部長として、早期退職優遇制度導入に。
創業者の松下幸之助氏が、「雇用確保の最優先」を
掲げていただけに風当たりも強かった。
「松下が初めて人に手をつけるのか」と言われた。
予想を上回る1万3000人が応募。
その後、業績はV字回復を果たした。
当時、人事部長で、現関西国際空港会社社長の
福島伸一さん(60)は、「スポーツで鍛えられたリーダーシップ、
最後まであきらめない情熱が下地になり、決断力、統率力、
状況を見る視野の広さにつながっている」
現在は、コーポレートコミュニケーション、
CSR(企業の社会的責任)担当。
野球、バスケット、バレーボールの3部を統括。
野球部は全員、バスケット、バレーも大半が社員で、
引退後は社業に専念するが、企業スポーツを取り巻く環境は、
鍛治舍さんの現役時代とは変化。
競技レベルが上がり、練習時間も長くならざるを得ない。
「今の選手はかわいそう。練習後に会社に戻るのはなかなか…」
昨秋からの不況。
コスト低減は、当然のこととして求められている。
鍛治舍さんは、「組織の多様性を維持するため、
スポーツマンタイプは欠かせない」
「競技に取り組む姿勢で、(引退後)1年間(仕事を)頑張れば
必ず追いつける」
その信念は、自らの経験の上に成り立っている。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/09/11/20090911ddm035050068000c.html
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