(2009年9月11日 毎日新聞社)
夏を乗り切ったと思ったら、体調を崩した--。
涼しい室内で働く人たちの間に、こうした訴えが増えている。
気候はしのぎやすくなったのに、食欲がない、体がだるい、
風邪を引きやすいなどの自覚症状が出たら、「秋ばて」かも。
「秋ばて」と名づけたのは、女性専門医院
「麻布ミューズクリニック」院長で漢方専門医の渡辺賀子医師。
残暑が落ち着く9月中旬になって、倦怠感や食欲不振など、
夏ばてのような症状を訴えて受診する女性が増える。
冷房がきいた室内で一日中過ごしたり、
冷たいものを好んで飲み食いしていた。
「高温多湿の暑さに負ける『夏ばて』から、体を冷やし過ぎることによる
体調不良に変わってきている」
これは、男性にも当てはまる。
なぜ、夏に体を冷やすといけないのか?
日本人の体は、「夏は暑く、冬は寒い」という季節の変化に適応。
冬の体は、基礎代謝が活発になり、熱を生産して体を内側から
温める一方、夏の体は熱生産を抑えようとする。
体が「快適」と感じる気温も、冬に比べて3度程度高い。
暑い夏に適応している体を冷やすことで、適応できなくなりやすい。
こうした長期的なリズムに加え、人体には24時間の気温の変化に
対し、体温を一定に保つための調節機能がある。
それを担うのが自律神経。
自律神経は、興奮を促す交感神経と、安静に導く副交感神経の
2系統からなる。
日中は、交感神経が優位になるため、末端の血管が収縮して
血圧や心拍数を上げる。
末端の血流が悪くなっているところに、涼し過ぎる環境が加わり、
交感神経のスイッチが入りっぱなしになり、手足が冷え切ってしまう。
ストレスの多い現代人は、交感神経優位になりやすい。
「自律神経の調節機能だけに任せていると、
血流が悪い状態が続き、体温が下がる。
それが長期間続くことで、免疫力が低下し、
風邪を引きやすくなったり胃腸の調子を悪くする。
頭痛や関節痛が表れる『冷房病』と違い、
自分の冷えに気づいていない人も多い」
「冷え」の解消には、体を温めること。
朝食は、おじややスープなど温かいメニューを取るのが効果的。
室内では、自分で温度調節できるのなら温度を高めに。
調節できない場合、重ね着で体温調節をする。
冷えやすい足元や風が直接当たる肩付近を
集中的に守ることで、冷えはかなり防げる。
渡辺さんが勧めるのが浴槽入浴。
「体を温めると同時に、お湯につかってスイッチを
副交感神経に切り替える。安眠につながり、体力も取り戻せる。
現代人は、夏こそシャワーで済まさず、浴槽入浴です」
すでに体調不良なら、病院を受診して胃腸薬や睡眠導入剤、
風邪薬などを処方してもらう。
漢方薬は、体調を補う「補剤」として効果的。
胃腸には、六君子湯や四君子湯、倦怠感には補中益気湯、
昔の夏ばてによく使われた清暑益気湯などが有効。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/11/107521/
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