(毎日 9月10日)
長野・富士見高原で、高校の長距離選手を対象にした
日本陸連の強化合宿で、元富士通の駅伝選手だった
帯刀秀幸さん(32)に出会った。
高校生と一緒に走りながらハッパをかける姿に驚き、話を聞いた。
富士通時代、契約社員という立場を利用して千葉大に通い、
今春、地元・長野の私立上田西高で念願の教職に。
長野・大町高から亜大に進んだ。
「陸上の楽しさ、喜びを教えられるのは教職しかないと思った」
亜大では、教員免許の取得を目指した。
箱根駅伝での活躍が目にとまり、99年、富士通へ。
夢をあきらめきれなかった帯刀さんは、
「将来のために勉強したかった」と契約社員としての道を選んだ。
富士通は、正社員雇用が基本だが、出身大学で練習を続ける
短距離選手を中心に、契約社員も選べた。
OBでは、百メートル日本記録保持者の伊東浩司さんや
日本陸連男子短距離部長の苅部俊二さん、
現役では北京五輪四百メートルリレー銅メダリストの
塚原直貴らも契約社員。
途中で正社員に転籍できるシステムも整備され、
木内敏夫・陸上部総監督は、
「人生はどこで変わるか分からない。
まずは、競技第一で本人が望む方法を選べばいい」
入社後、帯刀さんは昼過ぎまで働き、練習の合間を縫って、
近くにあった千葉大の科目等履修生に。
合宿などで授業を受けられないこともあり、
国語や体育の免許など50単位を修得するのに5年近くかかった。
「辞めた後のことを考えながら、悔いの残らないように
陸上に打ち込めた」と振り返る。
一般的に契約社員といえば、継続的な雇用が保障されておらず、
昨年来の不況下では、解雇や契約未更新など負のイメージが強い。
その中で契約社員、学生、競技者の三つの役割を成し遂げた
帯刀さんは、「本人が人生プランをしっかり立てていれば、
契約社員も悪くない」
上田西高での採用が決まったのを機に、
昨年12月の福岡国際マラソンで、選手人生にピリオドを打った。
4月から、国語の教員として教壇に立ち、
放課後は部員11人の陸上部を指導。
教員1年生の帯刀さんは、「学校の仕事が手いっぱいで、
まともに練習を見られていない」
陸上部は近年、駅伝では低迷、強化への道のりは始まったばかり。
帯刀さんは、「将来、日本の中心選手になれるような高校生を育てる。
それが、わがままを許してもらった会社や、
協力していただいた方々への恩返しになると思う」
http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/09/10/20090910ddm035050078000c.html
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