2009年9月17日木曜日

慶応大学の清水教授 「電気自動車、異業種こそチャンス」

(日経 9月7日)

走行中のCO2排出量がゼロの電気自動車(EV)が、
本格普及期を迎えようとしている。
三菱自動車が量販を始めるなど、大手自動車メーカーの
開発・製品化計画が相次ぐ。
見逃せないのは、新規参入企業の出現。
自ら開発したEV技術の普及を狙って新会社を立ち上げた
慶応大学の清水浩教授に、
EV時代の自動車産業の行方を聞いた。

——三菱自動車が「i—MiEV(アイ・ミーブ)」の量販を
7月に始めるなど、本格的なEVの製品化が動き出した。

「アイ・ミーブは、とてもよくできたEV。
今までと比べ、格段に性能が良い。
価格は400万円を超える。
1回の充電で走行できる距離は、160キロメートル。
外見は既存の軽自動車『アイ』と同じ。
売れるかどうかは、これらの要素を顧客がどう評価するかによる」

時代が転換期を迎えていることは間違いない。
地球温暖化問題は抜き差しならない。
石油資源の制約もある。内燃機関ではもう持たない」

——車輪一つ一つにモーターを内蔵して駆動する
インホイールモーター型のEVを研究してきた。

「従来のEVでは、エンジンがあったところにモーターを置く発想。
インホイールモーターは、一つ一つの車輪にモーターを
内蔵させて制御する方式。
クルマの構造が簡単になり、設計の自由度が広がる。
空気抵抗の小さいEVの設計に結びつくし、軽量化も図れる。
結果として、電池容量が同じでも、従来方式に比べ、
航続距離は2倍に伸ばせる」

——ベネッセコーポレーションの福武総一郎会長や
ガリバーインターナショナルなどと組んで、
新会社「シムドライブ」を設立した。狙いは?

「EVについては、30年にわたり研究を続けてきた。
最高時速370キロメートルを達成した
インホイールモーター方式の4人乗りセダン
『Eliica(エリーカ)』も試作した。
これらの成果を早く広めたい。
ライセンスをオーブンにして、とにかく実用化を進めたい。
そんな思いで設立した」

——新会社では具体的に何をするのか?

「自動車メーカーや部品メーカー、家電メーカー、重工メーカーなど、
EVを事業化したい企業に対して、我々が開発してきた技術を
供与したり、一緒に共同開発したりする。
一人乗り乗用車からバス・トラックまで、幅広いクルマのEV化に」

——既存の自動車メーカーの反応は?

「かつて軽自動車ベースのEV開発で、
ダイハツ工業と組んだことがある。
最近は、いすゞ自動車とバスで電気自動車を作ることに。
今のところ、親しい関係のメーカーは多くない。
インホイールモーターという技術そのものはかねてあり、
誰でもやろうと思えばできるからだろう」

「むしろ異業種企業の方がやりやすいかもしれない。
中国だって、電池メーカーのBYD(比亜迪、広東省)が
EV開発を進めるなど、新規参入企業が出てきている。
国内外のEVを事業化させようとしている企業に対し、
開発や普及を支援していきたい」

新産業が生まれる過程では、新規参入企業が果たす
役割は大きい。
デジタルカメラでは、最初に大手電機メーカーが開発したが、
うまく市場は立ち上がらなかった。
ところが、新規参入のカシオ計算機が製品化、ヒットし、
市場が一気に拡大した。
既存メーカーと新規参入企業が競い合うことで、
新しい市場は広がるものだ」

自動車の場合、世界で見れば、普及率はまだまだ低い。
広大なマーケットが広がっている。
これからパイが大きくなる分、新規参入の余地も大きい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090904.html

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