(日経 11月5日)
新製品やサービスの提案に不可欠な「企画書」。
社内外でのプレゼンテーションのため、作成する機会は多い。
内容が散漫になったり、マンネリに陥ったりするなど、
悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくない。
ヒット商品を世に送り出した開発者の経験談をもとに、
成果を生む企画書を作るためのコツやヒントを探った。
◆データ具体的に
「売れるはずだと思い込ませることが、何よりも必要」
三菱電機ホーム機器で、調理技術部長と開発部長を兼務する
長田正史さん(53)は、企画書の役割について。
長田さんらが中心に、2006年市場に投入した炊飯器「本炭釜」。
店頭実勢販売価格が10万円前後、炊飯器では高額ながら、
安定して売れ続けている。
長田さんは、それまでに培ってきたノウハウを企画書につぎ込んだ。
社内会議に使った「IH炭釜炊飯」と題した資料は、全部で8ページ。
最初のページこそ「狙い」、「開発内容」などを列挙した
一般的な内容だが、その先はかなり特徴的。
文字による説明をできるだけ省き、実験の結果を示す写真やグラフを
ふんだんに盛り込んだ。
生データを具体的に示し、「説得力」を高める効果を狙った。
白物家電は、市場も成熟し、新たなアイデアが出にくい。
日々の小さな観察の中からヒントを探し、
「自分の手で効果を確かめてみて、示すしかない」
本炭釜の商品化を提案するため、自宅で実験を行った。
炭片を釜の中に入れて米を炊くと、理想的な状態で沸騰することを
突き止め、その状態をデジタルカメラで撮影。
企画書に欠かせないのは、説得力だけではない。
生産やマーケティング、営業など様々な部門の関係者を
巻き込んで、その気にさせる「共感力」も求められる。
06年の発売以来、累積販売台数が40万個を突破、
貯金箱としては異例のヒット商品となった「人生銀行」。
この商品の企画書を作ったのが、
タカラトミー新規事業本部の遠藤千咲さん(26)。
プレゼン用ソフトで作成した企画書には、写真やイラスト、
動画を駆使、見る人を飽きさせない工夫を凝らした。
人生銀行には、液晶画面が付いている。
キャラクターが、硬貨を入れるたびに徐々に成長していく仕組み。
遠藤さんは、美大出身でイラストが得意という特長を生かし、
自らキャラクターのイメージ図を描いた。
◆「アンテナ」張る
イメージを知人に伝え、「見るからに貧しそうな格好をした青年」と
「葉巻をくゆらせる成功を収めた青年」の写真を用意。
企画書では、この写真を盛り込んで、
人生銀行のユニークさをアピールし、社内の共感を得た。
遠藤さんは、「具体的なイメージを持ってもらうことと、
何よりも面白がってもらうことを意識した」
この時のプレゼンテーションは、社内研修の一環だったが、
その場で商品化が決まり、売れ続けるロングセラー商品に。
長田さんと遠藤さんに共通するのは、
新商品のヒントになりそうなできごとへのアンテナを張り、
その成果を企画書に反映させている点。
長田さんは、常にデジタルカメラを携帯し、飲食店などで
参考になりそうな事例を撮影。
本炭釜では、飲食店で炭釜を使って炊いた米飯の写真を撮影、
企画書の最後のページに載せた。
遠藤さんも、スケッチブックを持ち歩き、新たなアイデアなどを
思い浮かぶと、イラストや文字で書き記している。
社内で関係者に見せて、即席の企画書に仕上げることも。
「興味をもってもらえれば、次につながることもある」(遠藤さん)。
優れた企画書は、日々の努力のたまものと言えそう。
◆デザインライターの道添氏の話
「詰め込みすぎには注意」
多くの企画書を見ていて気付くのは、
少ないスペースにあれこれ入れてしまう「詰め込みすぎ」。
文章を短くしたり、3、4行ごとに1行程度の空白を入れたりする、
といった工夫を。
経緯が分からない人が見ることを念頭に置き、
読み手の立場になって考えることが大切。
ムダな図やイラスト、写真が多いことも理解を妨げる要因。
色の多用やグラデーションなど、機能を多様しすぎるのも目障り。
パソコン機能向上のため、加工を簡単にできるが、
シンプルであればそれだけ、内容を訴えかける力が強くなる。
内容を磨くことが前提だが、見た目も重要。
作成能力を高めるには、いい企画書を作っている先輩のまねも。
優れたデザインの雑誌や広告も参考。
物まねで終わるのではなく、自分なりの「型」を作っていけば、
プレゼンテーションを成功に導く企画書を作りやすくなる。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz091105.html
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