2009年11月14日土曜日

いまこそ、基本法論議を・・・東京オリンピック招致のレガシーとして

(sfen 11月11日)

東京オリンピック招致がきっかけとなり、
スポーツ基本法、スポーツ庁設置の必要性が再度高まりつつある。
スポーツ政策に詳しい佐野 慎輔氏(産経新聞社)に、
1961年に制定されたスポーツ振興法から、
2009年に廃案となったスポーツ基本法案まで、
わが国のスポーツ政策の歩みと今後の方向性を説く。

東京の2016年オリンピック招致が残念な結果に終わった後、
活動の先頭に立った河野一郎招致委員会事務総長は、
「われわれの招致活動は確かに敗れてしまったが、
レガシー(遺産)として、必ず後世に伝えられていくと信じている

東京の蹉跌については、きちんと分析されるべき。
国際的な戦略不足、ロビー活動など外交力不足、
国民の支持率の低さなど、いろいろ指摘。

支持率の低さなどは問題にならない。
国際オリンピック委員会(IOC)委員は、
「オリンピック開催が決まれば、どんな都市でも盛り上がる」
2012年夏季大会ロンドンの支持率は、立候補5都市中最下位、
2014年冬季大会のソチも、ライバル平昌には遠く及ばない。

支持率の背後にあるスポーツ土壌やスポーツ政策について、
国際戦略も含めて、きちんと検証されなければならない。
河野さんのいうレガシーの伝播は、検証後に始まる。

東京が敗れたのは、スポーツ政策に不備があったからだと、
再度「スポーツ基本法」制定、「スポーツ庁」の設置の必要性を
求める声が上がり始めた。
これらもまた、招致のレガシーだ。

日本のスポーツ政策は、1961年に制定された
「スポーツ振興法」を基本に実施。
振興法は、1964年東京オリンピックを控え、
根拠法令としての側面を持ち、スポーツの定義に始まって
行政計画の策定、施設整備、指導者要請、国民体育大会開催、
研究の促進、補助金など全23条。

スポーツ振興のための基本的な考えを定められているが、
プロスポーツや財源確保の問題などへの言及はなく、
訓示的な性格が強い。

行政計画の要諦である政府の「スポーツ振興基本計画」が、
2000年まで策定されず、スポーツの果たす役割や機能が
複雑化している状況やスポーツを通した国際社会への参画など、
今日的なニーズにはもはや対応しきれない。

2007年、「国のスポーツ振興策のあり方」を問う声が、
自民党を中心にあがり、スポーツ振興法改訂が取りざたされた。
2008年、自民党政務調査会スポーツ立国調査会は、
「『スポーツ立国』ニッポンを目指して~国家戦略としてのスポーツ~」
と題した中間報告。

戦略1・競技力の向上に国を挙げて取り組む、
戦略2・国際競技大会の招致に国として積極的に取り組む、
戦略3・地域のスポーツ環境の整備を支援する、
との3つの柱とともに、
「新スポーツ法の制定」、
「スポーツ省(庁)の設置とスポーツ振興組織の整備」、
「スポーツ予算の拡充」
といった取り組みが示された。
スポーツ界からみれば、諸手をあげて賛成する内容。

超党派議員連盟の命をうけたアドバイザリー・ボードが、
2008年4月から活動。
新スポーツ法は振興法の改訂ではなく、根本理念をうたう
「スポーツ基本法」制定をめざし、2009年4月に答申を提出。
この答申も、自民党案に近いもの。

「スポーツ基本法案」がまとめられ、国会に提出されたが、
民主党との意見の差異から、自民党単独の議員立法として
7月に国会に提出。
法案は、衆議院解散によって廃案に追い込まれた。

廃案を残念がる声はあった。
振り返って考えれば、スポーツ界にとっては、
結果的に良かったのではないか。

議員立法国会提出にあたり、文部科学省の官僚が作成した
基本法案は、基本的には振興法を踏襲したもの。
プロスポーツの項目は加わったが、相変わらず学校教育に主眼、
オリンピックよりも国民体育大会重視、
体育指導委員にひとつ条文が割かれているのも特徴的。
文部科学省の意思を反映しやすい形の法案に。

スポーツ省(庁)設置については、法案には盛り込まれず、
附則として、「政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮して
検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」との文言。

スポーツ関連予算をもち、実際に政策を実施している官庁は、
文部科学省以外に、健康に関わる厚生労働省、
施設建設の国土交通省や環境省、総務省、金融庁など多岐に。
それぞれが独自にスポーツ施策を行う縦割りが、
日本のスポーツ政策をわかりにくく、統合性を欠く一因。

スポーツ省(庁)には、縦割り行政に横串を刺すねらい。
各省庁の省益を妨げ、スポーツ所管官庁としての
文部科学省の省益を損ねることへの抵抗は大きい。
答申など参考意見を、換骨奪胎した法案につながった。

廃案は、官僚たちの手から、再び国民の視線による
スポーツ環境整備を行ういい転機と考えるべき。

国家戦略としてのスポーツ振興を掲げる自民党と、
政権を奪取した民主党との政策の差を指摘し、
基本法制定などの困難さを説く声が。

民主党は、マニフェストではないが、文部科学政策に
地域スポーツ振興、地域のスポーツ基盤整備を重視する
内容を盛り込んだ。
そこが両党の違いで、トップアスリート育成強化など
「トップダウン型」の自民、民主は「ボトムアップ型」に主眼。

両者は、スポーツ振興になくてはならない概念には違いない。
スポーツ省(庁)設置に対し、両党ともに
スポーツ政策の基本となる基本法制定では一致。
スポーツ基本法案再提出への環境は、悪くはない。

スポーツの持つ「する」、「みる」、「支える」、「学ぶ」、「競う」、
「育てる」、「交わる」といった要素を育てていくため、
どんなスポーツ政策が必要なのか。
東京招致の余韻が残るいまこそ、
国民のスポーツ権を重視した議論が望まれる。

体力つくり関係予算(当初予算ベース)(千円、2005年度)
文部科学省   52,241,138
厚生労働省   37,910,327
社会保険庁   51,007,174
農林水産省    7,725,622
経済産業省    11,450
国土交通省  107,608,800
環境省      12,597,166
合計       269,101,677
笹川スポーツ財団「スポーツ白書」(2006)より作成

http://www.ssf.or.jp/sfen/special_contents1.html

0 件のコメント: