(日経 10月31日)
世界を揺るがせたリーマン・ショックから1年。
経済はやや落ち着きを取り戻しつつあるが、先行きは不透明。
経営者は成長戦略、経営課題をどう描くべきか?
第11回日経フォーラム「世界経営者会議」に出席した
トップにインタビュー。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。
——未曽有の経済危機の中で好業績が続いている要因は?
「経営をしていくなら、いつも危機だと思わなければいけない。
世の中はどんどん変わり、事業環境もどんどん変わっていくから、
安定することはない。
逆に(本当の)危機の時、経営トップは『危機だ』などと
言ってはいけない。
それでは会社が崩壊する。
悠然と構えて、『いや、自分達の未来はこうするんだ』と
社員に語らなければいけない」
——危機下で、自らを客観視するのは難しい面もあるのでは?
「経営者は、未来はどうあるかを考え、
常に高い目標を掲げなければいけない。
我々は、2020年に連結売上高で5兆円(09年8月期の約7倍)を
目指している。
グローバル化し始めた大きな市場があり、
そこで理想的な企業なら、10年で10倍に成長できる。
こういう考え方が大事。
経営トップの希望より、大きく成長できる企業はない」
——ファーストリテイリングは「全員経営」をテーマに。
「現実の経営は、経営者だけがするのではなく、
社員全員でやるもの。
現場で実行をするのは社員であり、経営者は現場と
直結していないといけない。
ガバナンスだけをする経営者はあり得ない。
よほど産業全体が成長しているような場合を除けば、
経営者が放っておいて、現場の頑張りで成長するような
企業は1社もない。
我々のような小売業だけでなく、どういう事業でもそうだ」
——そうした手法でしか企業価値は高まっていかないと。
「企業、特に上場企業の価値は、成長力と収益性に集約、
最近は社会貢献も加わった。
現在は、企業の力がどんどん強くなり、国境を越えて作用し始め、
社会貢献性も今まで以上に考えないといけない。
政治が世界を変えると考える人が多いが、
私は個人や私企業の方が世界を変えられると思う。
日本は、税金を払っている人がもっと声を上げないといけない。
世界的に高い日本の法人税率の問題なども含めて、
もっと(企業の成長を促して)稼ぐことを考えないと。
稼がない人が、今の日本には多すぎる」
——今後、ユニクロはどんな新商品を作っていくのか?
「企業は結局、お客様の潜在的ニーズを考え、
多分こういうものじゃないかと商品を作っていくしかない。
最近のお客様は何を買うかの前に、どこで買うかを考えている。
『ヒートテック』(08年、2800万枚を売った保温肌着)も、
ユニクロでなければあれだけブレークはしなかった。
ほかのところが、扱ってもあれほどブレークしなかったと思う」
「商品を売る前に(イメージとしての)店を売り、企業を売る。
それには、ブランド=信用が大事。
お客様一人ひとりから、『この企業は、私にこんなメリットを
提供してくれる』と思ってもらえなければ、
単純に商品を出しても売れない」
——自分のこれまでの経営は「60~70点と、ギリギリ及第点」と
評しているとか、足りない点は何か?
「残りの点をとるには、まずファーストリテイリングのグローバル化、
私の後継者育成。
今後、成長の80%は海外で達成しないといけない。
多数の経営者が必要。
我々社内だけでなく、世界中の優れた大学やコンサルタントなどと
提携し、仕事の実践を通じて経営者を育てる。
実践こそ経営者育成であり、その実現は十分に可能」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091030.html
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