2009年11月8日日曜日

自己投資のキーワードは「説明力」

(日経 2009-10-31)

厳しい雇用情勢を背景に、身銭を切ってでも
スキルアップを図るビジネスパーソンは多い。
多岐にわたるスキルの中で、彼らが注目しているのは何か?

ビジネススキルに関する講座やテキストを多数そろえている
産業能率大学と日本能率協会を取材し、
「説明力」という言葉がキーワードに。

説明力には、2つの意味がある。
1つは、自分の思っていることや考えていることを
相手に伝えるという意味。
コミュニケーション力や意思疎通能力とも言い換えられる。

社会人向けに、通信教育講座を企画・運営している
産業能率大学総合研究所によると、
スキルアップに関する講座で、「文章力を磨く」が人気。
「ビジネス文書入門コース」、「小論文の書き方入門コース」の
受講を申し込むビジネスパーソンが増えている。

費用は、文章力を磨くの場合で1万7850円
(期間は2カ月、リポートを2回提出)。
同僚との飲み会の費用を1回あたり4000円とすれば、
2カ月間で4、5回我慢する計算。
人にもよるが、決して軽い負担ではない。

同研究所の比企宏子・普及開発課長は、
「人気の背景には、電子メールに代表されるITの普及と
就労形態多様化、M&Aの増加の3つがある」

電子メールの普及は、ビジネスパーソン同士が
顔と顔を付き合わせて交渉する機会を減らした。
経費節減で、出張を控える企業が増えていることも拍車。

実際に会っていれば、言葉だけでなく、相手の表情や
身ぶりなども見られるので、誤解する危険性は小さい。
メールでは、文章が唯一の手段。
自分の真意を正確に相手に伝えるには、
一定水準以上の文章力が求められる。

職場では、パートや派遣、請負といった正社員以外の
就労形態の人も増えている。
正社員同士であれば、文章にしなくても、「あうんの呼吸」で
意思疎通ができたが、非正社員ではそうはいかない。
M&Aによって、ライバル企業の社員だった人と一緒に
働かなければならなくなった場合は言うまでもない。

説明力のもう1つの意味が、自分の能力の証明。
これまで「できてあたりまえ」と思われがちだった
業務分野において、その傾向が強まっている。

日本能率協会が立ち上げた2つの民間資格は、
そうしたニーズに応えたもの。
1つは、「生産技術者マネジメントスキル資格認定試験(CPE)」
生産設備の設計や配置を考えて、生産活動を効率的に
するための技能を証明するための資格。
もうひとつは、「調達プロフェッショナル(CPP)」
原材料や部品・部材の購買部門で働く人たちを対象に、
そのスキルを証明することを主な目的。

能率協会の試験対策テキスト代(試験費用を含む)は、
CPEが4万5000円前後、CPPが4万円前後。
能率協会の久保田英揮・生産マネジメント本部マネジャーは、
「法人経由の申し込みがほぼ100%だと思っていたが、
CPPで27%、CPEでも18%が個人名義」
久保田マネジャーは、「この数字は上司や会社に、
自分の能力を客観的に説明したいという気持ちの表れ」

コミュニケーションと自らの能力のアピール。
この2つの説明力が求められる場面は、これからも増える。
関連する講座や書籍への需要も、拡大する公算が大きい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo091030.html

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