2010年1月11日月曜日

夢を紡ぐ:地球に優しい新技術(その1) 期待募る「創エネ」の家

(毎日 1月3日)

温室効果ガスの排出を抑制、地球温暖化を食い止めることが、
喫緊の課題として注目。
環境技術分野で、日本は世界をリードしている。
国内では、どのような環境技術が開発途上にあり、
これらが実現すれば、われわれの近未来の生活は
どう変わるのかを紹介。
技術開発の現場で課題に取り組む人々に、
技術の特長や開発を巡る創意工夫を聞いた。

◇温暖化対策、家庭から

地球温暖化対策で、家庭部門の技術革新に期待。
2008年度のCO2排出量は、工場など産業部門が
1990年比13・0%減、家庭部門は同34・7%増。
排出量は、産業部門の約5分の2にとどまるものの、
家庭部門の削減は温暖化対策に不可欠。

こうした状況を商機ととらえた企業は、「省エネ」にとどまらず、
「創エネ」の技術革新を急ぐ。
▽「太陽光パネル」で発電
▽都市ガスを使った「燃料電池」で給湯と発電
▽効率のよい「直流配電」で、家庭内に無駄なく電気を配電
▽家庭用コンセントから充電する電気自動車のバッテリーを
家の蓄電池として活用
▽省エネ家電で余った電力をため込む「蓄電池」の常設
▽次世代送電網「スマートグリッド」を通じた家庭外への売電

パナソニックは「エコアイディアハウス」、
シャープは「DCエコハウス」、
大阪ガスは「スマートハウス」の名称で、近未来の家造りを掲げ、
住宅を発電所化し、CO2排出ゼロを目指している。

◇実用近い簡便蓄電池

パナソニックが開発したのは、パソコンなどに使われる
円筒形のリチウムイオン電池(直径1・8cm、長さ6・5cm)を
140本組み合わせた「電池モジュール」と呼ぶ蓄電池
重さは約8キロ。
家庭の「発電所化」の核になりうるもので、
早ければ2010年中に実用化。

太陽光で発電した電力や、電力会社から購入した夜間の
安い電力をこの蓄電池にため、電気代を抑えられ、
CO2排出量削減にもつながる。
将来的には、ためた電力の売電なども考えられる。

モジュール1個で、1・5kw時の容量。
一般家庭では、1日5kw時程度あれば通常の生活ができ、
モジュールが4個でほぼまかなえる。

特長は、必要な数を自由に組み合わせて使えること。
軽自動車なら12~13個、電動バイクなら1~2個で走れる。
太陽光発電の電力を、電気自動車で使うことも夢ではない。
80個集めれば、オフィスのバックアップ電源に。

◇集落、地域に蓄電所

温室効果ガス対策で、普及が進む家庭用太陽電池パネル。
最大の弱点は、昼間しか発電できないことにあり、
設備利用率は12%にとどまる。
弱点克服の鍵を握るのが、高性能の蓄電池。

昼間発電した電気を蓄え、夜に使うことができる。
一軒一軒の容量は小さくても、集落、地域単位で
さらに大容量の蓄電所(大規模な蓄電池の集合体)を設置、
大規模な発電所に近い役割を担いうる。
電力の質の維持や向上、行楽施設の需要変動には、
スマートグリッドで対応。

◇直流配電で無駄省く

家庭の創エネ実現に、大きな役割を果たすのが直流配電。
電力会社が配電する電気は現在、交流(AC)。
家電製品のうち、ファクス付き電話やミニコンポ、
パソコンなどは直流(DC)。
ACアダプターは、電気を交流から直流へ変換。
変換で、5~10%の無駄が発生。

家庭用太陽電池パネルが生み出す電気や、
蓄電池の充電、放電も直流。
直流配電実用化で、家庭内の省エネは飛躍的に進み、
余った電力を社会へ供給することも可能。

マイカーの電気自動車のバッテリーを、家庭用の蓄電池に使え、
昼間は太陽光パネルで発電し、マイカーに充電。
夜は、マイカーから家庭内に電気を流し、照明をつけ、
テレビを見ることもできる。

◇燃料電池で効率高く

ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素を反応させて
発電する「燃料電池」。
CO2排出がほとんどなく、発電時の廃熱からお湯を作るなど、
クリーンで効率の高いシステム。

大阪ガスは、燃料電池と太陽光パネル(太陽電池)、
蓄電池を「電池3兄弟」と命名。
三つの電池を組み合わせた「スマートハウス」の
実証実験を始める。

燃料電池で昼夜を通して発電し、家庭で使用しない分は
蓄電池にため込む。
昼間は、太陽光パネルで発電し、余った分は売電。
電力消費が増え、太陽光パネルが発電できない夜間は、
蓄電池の放電と燃料電池でまかなう。
電気の配分などの調整は、家庭のホームサーバーで
集中管理し、省エネとCO2の排出量を削減。

こうした組み合わせは、太陽光パネルで発電した電気の質を
安定させ、売電することができる。
家庭から社会全体のエネルギー効率を高められる
「スマート・エネルギー・ネットワーク」として、大阪ガスは提唱。
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◇スマートグリッド

情報通信と配電を統合した新技術。
明確な定義はないが、オバマ米大統領が環境技術を中心とした
経済政策「グリーン・ニューディール」と同時に提唱し、広まった。
太陽光や風力など、再生可能エネルギーで発電した電気を、
既存の送電網に効率よく、安定して流す技術にも使われる。

米国は、国土が広大なため既存の送電網への設備投資が
少なく、この新技術への期待は大きい。
日本の電力業界は、すでに高度な送電網があるとして、
太陽光の大量買電を想定した「日本型スマートグリッド」を検討。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/03/20100103ddm010040003000c.html

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