(毎日 1月3日)
火力発電所や製鉄所の排ガスから、CO2を9割カット--。
そんな夢の技術が、CCS(CO2の分離回収・貯留技術)。
CO2と結合する液体を使い、排ガスからCO2だけを
取り出す技術が実用化。
CO2を、岩盤の下にある地下1000メートル程度の地層に
封じ込める研究も進み、日本では電力会社などが出資する
「日本CCS調査」が貯留場所の調査を始めた。
政府は、20年までの実用化を目指す。
国際エネルギー機関(IEA)は、20年に世界の約100カ所に
貯留施設が造られ、年間約3億トンのCO2貯留が可能。
50年の貯留量は、年間100億トンに達する。
◇燃料電池車--排ガス、ゼロ
ホンダやトヨタ自動車、日産自動車が開発中の燃料電池車は、
ガソリンに代わり、水素を燃料に酸素と化学反応させて
電気を生み出し、電動モーターを動かす未来のクルマ。
走行中、CO2など排ガスを全く出さず、出すのは水だけ。
電気自動車と違い、1回の水素充てんで長距離走行が可能。
ホンダが20年以上かけて開発する「FCXクラリティ」は、
08年7月から日米で官公庁向けなどにリース販売。
燃料電池の量産化で、現在1億円程度(非公開)と言われる
価格を2ケタ以上引き下げることや、
水素ステーションの整備など普及には課題も残るが、
「究極のエコカー」として期待を集めている。
◇微生物混合飼料--牛、羊のげっぷ抑制
牛や羊などの反すう動物のげっぷに含まれるメタンガスが、
地球温暖化の一因。
メタンの温室効果はCO2の二十数倍、その15%程度が
牛などのげっぷによるものとの研究結果。
大手商社の丸紅は、乳酸菌など数種類の微生物を混合した
飼料BLCS(微生物利用の家畜清浄システム)の技術を持つ
ベンチャー企業と提携、農家への販売を進めている。
飼料は、げっぷを抑制するほか、体内での消化改善などで、
ふんに含まれる窒素などの有害物質を減らす効果があることが、
帯広畜産大学の研究室が行った調査などからも示された。
◇サトウキビからエタノール--エネルギー循環
アサヒビールは、沖縄本島に隣接する小さな島「伊江島」で、
サトウキビを使ったエタノール生産の研究を進めている。
ガソリンにエタノールを混ぜることで、化石燃料の使用量を減らし、
CO2排出量削減につなげるとともに、
島内でのエネルギー循環を目指している。
通常の約4倍に上る20本程度の茎が育つサトウキビを栽培。
砂糖の生産量を減らさず、砂糖製造から出る残りかすの
「糖みつ」や、搾りかすの「バガス」を使ってエタノールを生産。
このエタノールをガソリンに混ぜる。
サトウキビの葉は、畜産用の肥料として活用。
◇エコシップ--風や太陽光をフル活用
コンテナ船「NYKスーパーエコシップ2030」は、
海運最大手の日本郵船が構想した近未来船。
同社の技術子会社MTIとフィンランドのコンサルタント会社、
イタリアのデザイン会社が半年間かけ、共同設計。
完成予想模型を昨年4月に発表。
基本コンセプトは、「2030年に実現可能な技術を盛り込む」
重油を使用する従来のディーゼル機関に代わり、
液化天然ガス(LNG)の燃料電池を主動力源とする。
収納可能な帆8枚(計4000m2)、甲板カバーと帆を覆う
太陽光パネル(計3万1000m2)など、
自然エネルギーをフル活用。
ナノテクノロジーを駆使した疎水性・はっ水性の高い塗装を
船底に施し、船腹に空気を放出することで、摩擦抵抗も軽減。
現在運航中の同級船に比べ、CO2排出量を69%削減できる。
◇NPOバンク--市民の出資募り融資
市民などの出資を元手に、銀行が手がけにくい環境事業などに
融資する「NPOバンク」が、環境技術の育て役として注目。
音楽家の桜井和寿さんや坂本龍一さんらが出資する
「ap bank」もその一つ。
年1%の低利で、最大500万円を融資。
03年の設立以来、約90件に3億円以上を融資。
見山謙一郎さん(42)は、メガバンクを退職後の05年11月から
約3年間、ap bankで融資先企業の財務などを審査する
理事を務め、紙おむつを乾燥させて固形燃料に転換する装置を
開発した中小企業への融資などを手がけた。
取引先銀行が融資に難色を示したため、持ち込まれた案件、
東京都内の社会福祉法人などへの納入にこぎ着けた。
◇音力(振動力)発電--走ってライトアップ
車や機械の「振動」や会話など日常生活で生じる「音」を
エネルギーに変え、発電する「音力(振動力)発電」。
生活空間そのものが発電所となる「夢のエコ発電社会」を
実現する技術として、NECエレクトロニクスなど大手企業も注目。
車の振動を活用した高速道路のライトアップや、
電池がなくても指でボタンを押すわずかな振動で動く
「電池レス」リモコンなど一部実用化。
空気の振動である音という微弱なエネルギーを電気に変えるのは
難しかったが、試行錯誤のすえ発電効率は上昇。
将来は、通話する音声やメールボタンを押す振動で
充電できる携帯電話や、歩くだけで発電する靴が登場するかも、
と夢は膨らむ。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/03/20100103ddm010040014000c.html
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