2010年1月15日金曜日

教員養成(3)「教える」意識 現場で培う

(読売 1月7日)

実践教育を進めるうえでカギとなるのが、地域との連携。

昨年11月、秋田市立保戸野小学校5年2組、
「工業の種類を知る」をテーマに行われた社会の授業。
教壇に立つ担任の斉藤哲仁教諭(48)が、
「自分の興味のある工業について、ノートに書いてごらん」と
指示すると、傍らにいた女子学生が、教室内の巡回を始めた。

「何か分からないことはある?」
「インフルエンザで、人が死なない薬をつくりたいんだけど……」
ある児童が尋ねると、「それは製薬っていうのよ」とやさしく教える。

この学生は、秋田大学教育文化学部の学校教育課程3年、
宇梶有佳里さん(23)。
秋田大の「学校ボランティア」として、
昨年5月から毎週1回、同小に通い、1限目から4限目まで
指導補助を務めた後、給食時間も児童とともに過ごしている。

秋田大が、学生を地域の小学校などに派遣する活動を
始めたのは2003年。
最初は、文部科学省の委嘱事業として、
その後は秋田県教育委員会との連携事業として実施。
08年度、1~4年生約70人が、秋田市など県内6市の
公立小・中学校29校に派遣、
放課後の学習指導や授業の指導補助にあたった。

「約1年間、同じクラスの子どもたちと接するので、
それぞれの理解度や性格に合わせた指導方法を
考えることができ、いい経験になります」と宇梶さん。

同小の八柳久夫校長(60)も、
地域の学校が、大学に協力して有能な教師を育てるのは
重要なこと。
教師が多忙を極めるなか、学習指導面でも助かっている」と評価。

同学部の姫野完治准教授(33)は、
「多様な子どもたちに対応できる指導力を身につけるため、
長期間にわたり児童と接する活動は効果がある」と解説。

高知大学教育学部でも1998年度から、
教員養成課程1年次の必修科目として、
学生が地域の小学生たちと環境ボランティア活動などを通して
交流する「フレンドシップ事業」を展開。

高知市教育委員会や同市青少年育成協議会と協力、
小学校周辺のゴミ拾いやシャボン玉などの遊びを、
学生が子どもたちに指導。
同学部の上野行一教授(57)は、
「教員養成の早い段階から児童と接し、
教えられる側から教える側へと、意識を転換することが大切」

実践教育に詳しい横須賀薫・宮城教育大学名誉教授(72)は、
「実践的学習は、付属校での教育実習だけでは十分とはいえない。
多様な子どもたち、学校現場を幅広く体験して理解するためにも、
地域連携は不可欠だ」

課題もある。
秋田大の姫野准教授は、「学校現場での体験だけで、
教師像を安易に理解してしまいかねない面もある」
理論も踏まえて、教師のあるべき姿を考える必要性を強調。

地域を巻き込みながら、試行錯誤が続いている。

◆学校ボランティア

地域住民らが、登下校の安全パトロールや花壇の整備、
学習アシスタントなどさまざまな活動によって、
学校を支援する取り組みを指す。
教員養成大学・学部が、教員養成教育の一環として
学生を学校に派遣する場合、教育委員会が大学と連携し、
調整役となる場合が多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100107-OYT8T00225.htm

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