(2010年1月4日 共同通信社)
理系のママ研究者たちの子育てを支援する動きが、
各地の大学に広がっている。
夜遅くまでかかる実験などとの両立が難しく、
出産を機に退職する例が後を絶たなかった。
大学側の意識も、「福利厚生ではなく、国際競争を勝ち抜く戦略」
と変化、優秀な女性を確保する方策に知恵を絞っている。
東京大本郷キャンパスに、2008年4月オープンした大学直営の
学内保育所の利用者は、同大の教員と大学院生。
実験で早く帰れない理系研究者らに配慮し、
午後9時までの延長保育が可能。
子どもを迎えに来た医学系研究科の大学院生柴田彩さん(31)は、
「研究はどんどん進むので、長期間は休めない。
ここがあったおかげで、出産後すぐ復帰できました」
東大男女共同参画室の都河明子特任教授は、
「保育所開設の目的は、福利厚生ではなく、東大の国際戦略」と強調。
「理系を中心に、多くの優秀な女性が子育てを理由に
研究を断念してきた。
子育て支援で、現在9%の女性教員比率を、
世界主要大学並みの20~30%に引き上げたい」
総務省の調査によると、大学や企業などの理系研究者の
女性比率は、08年現在13・0%。
米国34・3%、イタリア29・9%、フランス27・8%などに比べ、
かなり低い。
「優秀な女性研究者を確保しないと、国際競争で後れを取る」と
危機感を抱いた文部科学省は、06年度から、
育児との両立を図る事業に取り組む大学の支援に乗りだした。
それが起爆剤となり、東大のほか東北大、大阪大、九州大など
大学独自の予算で、学内保育所を開設する動きが全国に拡大。
日本大など、発熱時の子どもも預かる病児保育を検討。
静岡大、神戸大、金沢大、広島大など、女性研究者が育児の時間を
確保できるよう、研究を補佐する支援員を配置。
神戸大大学院で、生物学を専攻する研究員、日下部りえさん(38)は、
小学校と保育園に通う3人の子どもがいる。
二人三脚で、研究に取り組む支援員の大学院修士課程2年、
谷沙織さん(25)がいるおかげで、実験の途中でも後を託し、
夕方に帰宅することができる。
「谷さんがいないと、研究と子育ての両立は不可能」、
「日下部さんと接し、子どもがいても研究はできると、
将来に希望がわきました」
女性研究員の支援に尽力してきた小舘香椎子・
日本女子大名誉教授は、「出産後も、研究を続ける女性の実例を
増やすことが、将来の人材確保につながる。
そのことに気付いた大学が、次々に支援の流れに加わっている。
国も、この流れをさらに後押ししないと、
科学技術立国を目指す日本の未来はありません」と断言。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/4/113932/
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