(毎日 1月6日)
◇ベンチャー企業を経営、慶応義塾大学博士課程・速水浩平さん(28)
NECやエアバスも、その将来性を注目する
日常の振動音を電力に変える発電技術。
「きっかけは、小学校高学年で、モーターの原理を教わった
理科の授業でひらめいた、あるアイデアだった」。
速水さんはそう振り返る。
先生から習ったのは、モーターが回ると電気が起き、
スピーカーから音が出る仕組み。
「逆に、音から電気を作れないか」と考えた。
中学生や高校生になってもその思いは消えず、03年、
慶応大2年のころから本格的な研究を始めた。
周囲は、誰も見向きもしない。
「やめた方がいい」と言われた。
音から電気を起こそうと、素子や回路などの形状や組み合わせを
さまざまに工夫し実験を繰り返したが、
ほとんど発電せず、失敗の連続。
それでもめげずに実験を続けると、振動や圧力、騒音を
電圧に変える「圧電素子」に行き着いた。
スピーカーの音質を高める用途に使われているが、
発電に応用された事例は無かった。
実験で、わずかながらも発電が確認、「これが転機」と考えた
速水さんは、貯金や銀行借り入れなど100万円を元手に、
06年9月、ベンチャー企業「音力発電」を設立。
圧電素子に共振する膜や振り子を組み合わせて、
振動を増幅することで、音から出るエネルギーの
発電効率の向上に成功。
今では、半導体大手NECエレクトロニクスなど、
多くの企業と「未来の発電技術」として共同開発を進める。
夕暮れ時、首都高速中央環状線の荒川にかかる五色桜大橋は
白色LEDで美しく照らされる。
電力の一部は、振動力発電技術を活用、橋を通過する
車の振動から生じたも。
07年12月、橋脚部分に取り付けられた縦50cm、横20cm、
幅10cmの箱型の「振動力発電装置」がその証し。
装置1個当たりの発電力は、0・01w。
橋脚に設置されている10個すべてを合わせても、
家庭用100w電球をともすのに必要な電力の1000分の1程度しか
発電しないが、現在の最新装置は発電効率を約10倍に向上。
首都高の総延長295キロに取り付ければ、
火力発電所2~3基分を発電できる。
小学生時代から思いつくままノートに書きとめたアイデアは、
1000件以上。
「『お気に入り』は、音力発電を入れて5つ。
どれも実現すれば、生活をがらりと変える新技術ばかり。
もちろん秘密です」と笑う。
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◇音力発電
振動や騒音が加わると、電圧を生じる性質を持つ
「圧電素子」(ピエゾ素子)と呼ばれる特殊な素子を使って、
車の振動や、人が押したりする圧力から電気を生み出す仕組み。
振動力発電の一種で、エネルギー源として
空気の振動である音を利用。
振動や騒音のエネルギーを電気に変えるため、
建造物に取り付けた場合の免震効果も期待。
他の自然エネルギーに比べ、発電効率の低さが課題。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/06/20100106ddm008020119000c.html
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