2010年1月13日水曜日

夢を紡ぐ:地球に優しい新技術/1 エコシップ 熱意で「不可能」突破

(毎日 1月5日)

◇日本郵船グループの技術会社「MTI」技監・信原真人さん(58)

平べったい個性的な船体から、白い帆がにょっきりと生えている。
現実離れしたとも言えるデザインだが、「2030年までに
開発可能な技術ばかりを盛り込んだ結果。
決して、『夢』ではない」。開発責任者の信原真人さん。

日本郵船のコンテナ船「NYKスーパーエコシップ2030」。
08年4月に発足した環境特命プロジェクトの目玉として、
半年間の構想が実を結んだ。

重油を燃料とする従来のディーゼル機関の代わりに、
燃料電池を採用。
風力、太陽光の自然エネルギーも活用、船底には、サメの肌を
参考に、水の抵抗を低減する特殊塗装も施した。
現在のコンテナ船に比べ、CO2を69%も削減。

どこまでの技術進化が、30年までに期待できるか?
燃料電池の性能がアップしなければ、搭載数が増え、
船体重量が増えてしまう。
船体の素材は軽量でありながらも、十分な強度が必要。
開発チームは、国内外の電池、機械、造船メーカーの
技術者らと議論を重ねた。

「『開発不可能だ』とする専門家を説得に、骨を折った」と信原さん。
「商船は採算性が重要で、通常は18カ月先の引き渡しを
前提に設計。20年後を前提にした議論など、現実離れだった」

本人も、30隻を超える新型船に携わった元三菱重工業の
ベテラン設計技師。
「既成概念」にとらわれがちだったと告白。
そんな時、一回り以上も下の若手の熱意と工夫が
プロジェクトを推し進めた。
「積み荷が少ないとき、船体の空荷部分を取り外し、
船を縮めて、軽量化につなげる」とのアイデアも一例。
船の根幹たる強度面で、技術的なハードルは残されている。
「強度を考える従来の技術者では、絶対考えつかない」と舌を巻く。

世界のCO2排出量のうち、国際海運は約2・7%を占め、
「エコシップで、日本は大きな国際貢献を果たせる」
本船をてこに、2050年を目標にCO2を排出しない
「ゼロエミッション船」の実現も目指している。

昨春のエコシップの社内お披露目で、喝采を浴びたのは
船体縮小のアイデア。
信原さんは語った。
「人の熱意は、『夢』を『現実』にする。
20年後を楽しみにしていてください」
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◇NYKスーパーエコシップ2030

全長353mで、標準的なコンテナ(約38m3)を8000個積載。
満載時の船速は25ノット(時速約46キロ)。
新エネルギーや新素材などの先進技術を採用、
船内に木を植え、精神的な安らぎの場を設けるなどの
アイデアも凝らす。建造費は未定。
日本郵船は、10年にCO2排出量を30%削減した船を開発予定。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/05/20100105ddm008020115000c.html

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