2010年1月11日月曜日

北の国からのメッセージ:バンクーバー冬季五輪/5止 資金不足、IOCが補う

(毎日 1月6日)

「世界的な経済危機に向き合った、初めての五輪。
我々は、多くの新しい取り組みをしなければならなかった」
バンクーバー五輪組織委員会(VANOC)の
ジョン・ファーロング最高経営責任者(CEO)。

昨年10月、IOCに報告した大会予算では、
運営費は17億5000万カナダドル(約1505億円)。
2008年時点の16億3000万カナダドル(約1402億円)から、
1億カナダドル以上増えた。
ウィスラーで、表彰式会場の建設を取りやめたり、
運営に大量のボランティアを集めるなどで
経費抑制を図っているが、大会運営費は
3700万カナダドル(約32億円)不足。

助け舟を出したのは、IOC。
昨年8月、「運営費の収支が赤字となった場合、
IOCが補てんする」と約束。

IOCは、バンクーバー五輪と12年ロンドン五輪とをセットにした
公式スポンサー契約を、当初12社見込んでいた。
現在までに契約できたのは、9社。
不足分も、VANOCの財政に響いていた。
IOCは、現在の公式スポンサー収入の配分比率を変更し、
VANOCに手厚くする意向。
VANOCの財政担当、デーブ・コッブ副CEOは、
「IOCは、不況の影響を考慮したと思う」

IOCは、東京も立候補した16年夏季五輪開催地選考において、
大会で赤字が出た場合、政府が負担する「財政保証」を
各都市に強く求めている。
今回のVANOCへの対応は、それと正反対。
異例の配慮と言っていい。

ここまでのVANOCの準備状況は、「優等生」。
04年アテネ夏季大会は、直前まで会場建設がずれ込み、
06年トリノ冬季大会は、スピードスケート会場が
完成したのが開幕2カ月前。
今回は、開幕2年前までにすべての競技施設を完成。
「環境」や「先住民の参加」をうたった大会理念も、
IOCの意向に沿う。
03年の開催地決定から大会関連取材を続ける地元紙
「バンクーバー・サン」のジェフ・リー記者は、
IOCの配慮について、「個人的な意見だが、
VANOCがIOCから信頼を得た結果だ」

だからといって、赤字は許されない。
カナダには、76年モントリオール夏季五輪という苦い過去。
当時の額で10億米ドルの大赤字を出し、市民の税金による
穴埋めを余儀なくされた。
赤字を完済したのは、大会から30年後の06年。
今回、モントリオールの再現となり住民に負担を強いれば、
猛反発は必至。
今後、カナダで五輪を開催することは難しくなる。

コッブ副CEOは、「赤字は出さない」と強い口調で言い切る。
現在の世界的不況下で、健全運営を実現すれば、
「五輪史上に残る失敗」とされる“モントリオールショック”を
カナダは一掃したと、世界に伝えられる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/01/06/20100106ddm035050103000c.html

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