(毎日 1月8日)
◇「世界に必要」強く自負--
関西電力環境技術研究センター・八木靖幸さん(46)
天然ガスを燃やす南港発電所(大阪市)の煙突から、白い煙。
「これが、CO2を取り出せる『KS-1』」と八木さん。
発電所に隣接する実証実験プラントに備え付けの蛇口を
ひねると、黄色い液体がフラスコに注がれた。
工場など排ガスから、CO2を9割回収できる化学吸収液。
関電は90年、全国に先駆け、CO2分離・回収技術の研究を、
三菱重工業と始めた。
火力発電所が出す、CO2削減技術開発が急務。
排ガスのCO2回収法は、複数ある。
着目したのは、低温でCO2と結合、高温で分離する性質を持つ、
弱アルカリ性のアミン系水溶液を使う化学吸収法。
発電所の排ガスを回収施設のタンクに引き入れ、
40度で液体を振りかけ、CO2を吸着。
次に、別タンクの蒸気で120度に熱し、CO2を分離・回収。
八木さんら研究員の仕事は、数百種類ものアミンから
CO2の吸収、分離に適した液体を探すこと。
耐久性など、ハードルをクリアした液体とプラントは、
99年マレーシアの肥料工場に導入。
排出されるCO2を回収し、肥料の原料などとして
再利用する技術は、世界9カ所で使われる。
課題は残っている。
CCS(CO2分離回収・貯留技術)のコストは、
全工程でCO21トン当たり約7000円、
排出量取引市場の倍以上。
液の開発競争も激化する中、性能の高い液を探す研究が続く。
膨大な測定作業は、「進んでは壁にぶつかり、家でも悩む日々」
3年前、3項目のデータから液の性能を予測できる計算式を開発。
候補液を早く絞り込め、少ない熱でCO2分離できる液の発見に。
「耐久性などを検証し、早く実用化したい」
昨年12月、国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議
(COP15)で、CCSは途上国への技術協力による削減分を、
先進国の削減にあてる仕組み「CDM(クリーン開発メカニズム)」
の対象に決まった。
「世界の温暖化防止に欠かせない技術。やりがいを感じる」
地球規模で活用を見すえている。
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◇CCS(CO2の分離回収)
「カーボン・キャプチャー&ストレージ」の頭文字、
CO2の分離回収・貯留技術。
工場などの排ガスからCO2を取り出し、地中や海底に埋める技術、
CO2大幅削減が可能。
国際エネルギー機関(IEA)は、50年に年約100億トンの
CO2削減が可能と試算。
日本には、1500億トンが貯留可能とされ、
「日本CCS調査」が貯留候補地を調査中。
政府は、20年の実用化を目指す。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/08/20100108ddm008020052000c.html
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