(日経 1月5日)
ビジネスパーソンの間で、ロジカルシンキングへの関心が
高まっている。
ロジカルシンキング関連の書籍は毎月のように出版、
セミナーや研修も多数。
こうした動きは、私たちを取り巻く環境の変化の大きさを表す。
2008年9月、リーマン・ショックに代表されるように、
経済や社会情勢の変化は激しさを増す。
このような時代、過去の成功体験に安易に従うやり方は通用しない。
状況を自分なりにとらえ、それに応じて結論を組み立てていくことが
求められる。
その基盤が、ロジカルシンキング。
ロジカルシンキングとは、「明確な根拠に基づき、筋道を立てて
結論を導き出す思考」
問題解決や相手の説得など、誰もが遭遇するビジネスシーンで有効。
変化の激しい状況では、前例踏襲型の解決策をとるだけでは、
的確な対応ができない。
目についたことに場当たり的に対処しても、
効果的な解決策にはならない。
顧客への説明がうまくできず、成績があがらない若手営業パーソン。
上司が自分の成功体験を引き合いに、
「成績をあげたいなら、多くのお客様を訪問することが大事」と指示、
彼(彼女)が従ったらどうなるか?
説明下手は一向に解決されず、ますます顧客へ説明する
時間がとれず、成績は下がってしまう。
問題の本質をとらえた上で、きちんと筋道立てて
考えることができれば、
効果的な解決策を導き出す確率は高くなる。
この例では、問題の本質は「顧客への説明力不足」。
説明内容についての指導や先輩との同行を指示した方が、
若手営業パーソンの成績をあげるには効果的。
筋道立てて解決策を考えるように心がけていると、
他の場面でも応用できる可能性が高まる。
うまくいかなかった場面での修正も容易。
こうした考え方を組織全体に浸透させることができれば、
課題への取り組みや解決スピードの向上が期待。
誰かを説得する場面ではどうか?
説得は、ビジネス活動の中心。
顧客に自社の製品やサービスを購入してもらうことができるか、
パートナーと良好な関係を築くことができるか、
メンバーを巻き込んで業務を進めることができるか。
これらすべて、相手を説得できるかどうかにかかっている。
今の時代、企業は内外とも大きな変化にさらされている。
それに伴い、説得すべき相手も多様化し、難しさを増す。
社外では、業界再編や企業統合が頻繁に行われ、
一夜にしてまったく考え方の違う相手とコミュニケーションを
とらなければならなくなるケースも。
社内でも、雇用形態の違う派遣社員や契約社員が増えている。
人材の流動化やグローバル化の進展により、
文化的なバックグラウンドが異なる外国人社員とも
力を合わせなければならない。
「異質」な相手に対し、旧態依然の説得方法、
あうんの呼吸を通じて暗黙の了解をとりつけるのは不可能。
熱意があれば説得できる、というわけでもない。
熱意のこもった説得でも、何の根拠も示さずに言いたいことを
連呼するだけでは、伝えたい内容の理解にすらつながらない。
相手の状況に応じ、明確な根拠を示しながら
筋道の通った説明をすれば、説得内容の正確な理解につながり、
最終的に相手から同意を引き出しやすくなる。
ロジカルシンキングは、ビジネスで遭遇するあらゆる場面で
基礎となる思考。
◆うぶかた・まさや
ビジネススクール、サイコム・ブレインズの講師。
92年、東京大学文学部を卒業。
日産自動車やウィリアム・エム・マーサー(現マーサージャパン)、
グロービスを経て07年に独立。
論理思考力などの指導や人材開発体系の策定支援などに従事。
著書に「シナリオ構想力実践講座」(ファーストプレス)など。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz100105_2.html
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