2010年5月10日月曜日

インサイド:次代の針路 第1部 多様化するU18の現場/4

(毎日 4月24日)

甲子園で歴代1位の春夏11回優勝を誇る
高校野球の古豪、中京大中京高は最近、
フィギュアスケートへの人材輩出でも名をとどろかせている。

バンクーバー五輪銀メダリストの浅田真央をはじめ、
安藤美姫や小塚崇彦も卒業生。
今月、世界ジュニア選手権優勝の村上佳菜子が入学。

運営母体は、学校法人梅村学園。
梅村清弘理事長が、安藤が中学生の時に成功させた
4回転ジャンプを見て、「地元愛知の才能を、
学校を挙げて伸ばしたい」とフィギュアにも力点を置いた。
高校から約20キロ離れた愛知県豊田市内の中京大に
専用リンクができ、国内屈指の練習環境が整っている。

フィギュアのトップ選手が、一般の高校生と一緒に
学校生活を送るのは難しい。
安藤も、2年生までは早朝練習後に登校し、
授業後に練習に行くなどしたが、3年生になった
トリノ五輪の前年は、拠点が米国。
インターネットをフル活用し、卒業まで学校とリポートを
メールでやり取りした。

翌年度、浅田が入学。
直後から、拠点は米国に移ったが、「安藤の経験が生きた」と、
安藤のサポートを担当していた法人の鈴木綱男理事。
浅田に対し、英語科では国際大会に出場した感想を
英作文で書かせた。
社会科では、大会の開催都市に関する歴史的背景や
地勢などのリポートが課題。
国内にいる時、「教員が実際に会う方がいい」との
伊神勝彦校長の考えもあり、浅田のもとに教師が赴く「出張授業」も。

「真央ちゃんが通っていた」という理由で、村上が入学。
「今は、まだ名古屋で練習したい」と話すが、
4年後のソチ五輪を目指し、今後は海外を転戦する生活が。
伊神校長は、「どこにいても、学業と両立しながら競技を
向上させるノウハウはある」と胸を張る。

このようなケースは増えてきた。
青森山田高は、卓球女子の中国リーグに参戦した福原愛を
卒業まで支えた。
後輩の水谷隼(明大)も、日本代表強化選手になり、
在学中からドイツリーグへ。
木村隆文校長は、「勉強は日本に戻ってからでいい」、
帰国後、通常の6時限に2時限増やして補った。

プロゴルフの石川遼が通った東京・杉並学院高は、
学習指導要領で認められている「学校設定教科」を導入。
学校独自の判断で、指導要領以外の教科を決め、
単位にできる制度。

石川がプロ転向した2年時、欠席分を集中講義で補い、
単位や出席日数を満たしたが、3年から出席できなくなった。
学校は、石川の競技活動に学校設定教科の制度を適用。
文部科学省初等中等教育局へ出向経験がある
吉野弘一校長は、「世界大会出場が、学業に有意義な面も。
若い才能の芽は伸ばさなければ」、
海外コンクールに出る合唱部にも、この制度をあてはめた。

こうした風潮を疑問視する見方も。
「義務教育が終わっているとはいえ、望ましいとは思えない。
(授業以外の活動を単位に認める)このような制度が
学校のネームバリューを上げるのに利用されると問題だ」、
スポーツ選手の学力低下を指摘し続けている
愛知医科大の馬場礼三准教授。

トップ選手の低年齢化が進み、学業との両立がますます困難な時代。
学校も知恵を絞っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2010/04/24/20100424ddm035050155000c.html

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