(読売 5月7日)
「地面の雪が解けないのは、土の温度が低いから。
もう1回ぐらい(雪が)降るよ」
関東一円に雪が降った直後の2月初め、
藤沢市の重田光雄さん(75)のハウスを訪ねると、
まず天候が話題に。
話し相手は、ハウスと目と鼻の先の
慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)にある環境情報学部の
神成淳司講師(38)(4月から准教授)。
トマト栽培歴40年以上、関東で指折りの優れた生産技術を持つ
重田さんは、SFC研究所訪問所員。
ハウスでは、神成さんの研究室で開発したシステムが、
気温や土壌温度、日照量、残留肥料などの生育環境を、
24時間自動的に記録、解析。
孫のような年齢の学生たちも、週1回は農作業を手伝う。
「日本は人口減社会で、農地も減少傾向。
農家の高齢化も進んでいる。
世界的には食料不足。
日本の熟練農家の優れた生産技術は、世界に売り出せる武器。
従来は水をまく時期一つをとっても、一人前とされるのに
時間がかかったが、熟練農家の技術を解析し継承することで、
従来よりも短時間で、一人前になることが見込める」と神成さん。
藤沢以外でも農家と連携、優れた生産技術の継承や活用に
取り組み、農産物の付加価値の<見える化>も模索。
生産段階からのデータを携帯電話で読めるイチゴは、
一部スーパーで販売、好評を博している。
SFC1期生。元々は人工知能の研究者。
周囲に、今も農地が多いSFC。
入試の面接で、「自給自足できるキャンパスにしたい」と訴え、
入学直後に大学と交渉し、キャンパス内の土地を借り受け、
地元農家の指導を受けながら、農作物を栽培した伝説の人物が。
環境情報学部2期生で、現在は農産物流通コンサルタントの
山本謙治さん(39)。
「面白いと、学部長が何万円もカンパしてくれた。
草創期のよさですね」
山本さんが作った農業サークル「八百藤」は、
登録メンバーが150人に達した時期も。
開設時、地域に開かれたキャンパス・ビレッジ構想を掲げたSFC。
その地域とのつながりを作った功績が、
山本さんの塾長賞受賞を後押し。
SFCでは、今も地元とかかわろうとする学生は少なくない。
「学生はもっともっと、地元とかかわってほしい。
学生時代にできることは限られる。
いきなり大きなことをやろうとしても無理。
地域でできないことが、世界を相手にできるわけがない」。
1年の3分の1は出張で、全国を飛び回る山本さんから
後輩へのメッセージ。
◆キャンパス・ビレッジ構想
環境との調和や地域との共生を掲げた周辺地区開発構想計画。
1992年に報告書がまとまった。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100507-OYT8T00272.htm
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