2010年5月4日火曜日

有人宇宙活動でアピールしてほしいことは?

(サイエンスポータル 2010年4月27日)

山崎直子宇宙飛行士らが搭乗した米スペースシャトル
「ディスカバリー」による13日間の活動について、
航空宇宙研究開発機構(JAXA)が、宇宙開発委員会に報告。

今回の主な任務は、「多目的補給モジュールを
国際宇宙ステーション(ISS)結合部に取り付ける」、「搭載物資の移送」、
船外活動による「アンモニアタンク、レートジャイロ・アセンブリの交換」、
「『きぼう』からの微小粒子捕獲実験装置・材料曝露実験装置の回収」

山崎宇宙飛行士が担当した主な任務は、シャトルロボットアームに
取り付けたセンサ付きブームの操作による「ディスカバリー」機体の
損傷点検、多目的補給モジュールのISSへの移設と物資移送。

ISSの日本実験棟「きぼう」では、どんな実験が行われたのか?
「宇宙放射線と微小重力に長期間さらされた神経細胞が受ける
影響について、遺伝子のレベルで詳細な情報を得る」、

「筋肉タンパク質(Cbl-b)に注目、新規筋萎縮メカニズムを
明らかにすることで、宇宙飛行士だけでなく、
老化や寝たきりによる筋萎縮へ応用する」、

「宇宙飛行士に付着している微生物、特に真菌(カビ)の変化を
調べることで、今後の宇宙飛行士の健康管理に役立てる」、

「『きぼう』船内の宇宙放射線量を計測する」といった説明。

真菌の変化を調べた試料と宇宙放射線量を計測した機器は、
ディスカバリーによって持ち帰られた。
今後、地上でさらに詳しい解析が進められる。

これだけ読んで、大事なことをやっている、とピンとくる
普通の国民は少ないのでは。

日経新聞26日朝刊「レビュー&プレビュー」面に、
「宇宙実験日本の果実は 医学データ蓄積/新材料生まれず」
という記事。

この18年間、スペースシャトルに搭乗した日本人宇宙飛行士たちの
活動を振り返り、「医学関連の研究は、宇宙酔いを防ぐ薬の種類や
量などの知識を蓄えるのに役立った。
弱った骨や筋肉を、地球帰還後に鍛え直す方法の研究も進んだ」と、
具体的成果を挙げている。

「ただ、それ以外の科学実験は、掛け声倒れが目立つ。
成果が米サイエンス、英ネイチャーなど有名科学雑誌に
掲載された例は少ない。
宇宙での結晶成長実験などから、エレクトロニクスや自動車などの
分野で、広く使われる優れた材料が生まれた話は聞かない」

日本の有人宇宙活動も、よくぞここまで来た。
シャトルの機体と搭乗宇宙飛行士乗員全員の命を失った
2度の大事故を乗り越えて…。
そう考える人たちは、日本で有人宇宙活動を推進してきた人たちに多い。
シャトル計画とISS計画に、日本が参加しなかったなら、
有人活動の経験は全く得られなかった、という思いもまた強い。

問題は、どれだけ多くの国民が同じように思っているかでは。
前原誠司・宇宙開発担当相は、ディスカバリー帰還に際し、
「山崎宇宙飛行士が、野口聡一宇宙飛行士を含む
各国の宇宙飛行士と協力し、予定されたミッションを成功裏に
遂行されたことは、わが国としての責務を果たし、
多くの方々に感銘を与えた。
地上との交信で、日本古来の文化である俳句や琴を披露、
国民の皆様に宇宙を身近に感じていただく上で意義深い。
今後、国際宇宙ステーションにおけるさまざまな活動が、
国際協力を一層進め、大きな成果をもたらすことを期待」

「きぼう」内での実験など科学的、技術的な具体的活動には
触れていない。
「日本人宇宙飛行士たちのおかげで、
宇宙は十分身近に感じられるようになった。
有人宇宙活動は、何のためにやるかをアピールしてほしい
そんな声が、宇宙開発を応援する人たちから出てきそうな気もする。

http://scienceportal.jp/news/review/1004/1004271.html

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