2010年5月2日日曜日

スポーツ立国 第1部 支援(3)強化と普及「地域」主役に

(読売 4月25日)

これから日本スポーツ界を支えるのは、だれなのか?
そのキーワードは「地域」――。

2008年北京五輪陸上男子400mリレーで、銅メダルを手にした
朝原宣治は、引退後も走っている。
今年4月、兵庫県西宮市で陸上クラブを発足。
集まったのは、小学生から大学生までの約120人。
トップレベルの指導者による一貫指導は、選手にとって魅力的。

目指すのは、かつて留学したドイツの地域クラブ。
練習拠点だった「シュツットガルト」は、サッカーで有名だが、
陸上やハンドボール部もある。
「学校の外で、こんなにスポーツが盛んなんだ」と驚いた。

スタジアムや体育館が開放され、トップ選手のほか、
子供からお年寄りまで、誰もがスポーツを楽しんでいた。
クラブの対抗戦ともなれば、家族で声援を送る。
「スポーツが身近にあるから、ドイツは五輪でも強い」
強化と普及が、表裏一体となっているスポーツ大国の底力を感じた。
「違う」と、朝原は思う。

日本の場合、子供がスポーツに触れる場は学校。
問題は少なくない。
少子化が進む中、学校単位でチームを組むため、
団体競技ができないケースが増えている。

小学校、中学校、高校、大学と学ぶ場が移ると、
指導者も変わり、選手は一貫した指導が受けられない。
卒業後、企業の支援を受けられないと、引退に追い込まれてしまう。
朝原は、「選手が環境に振り回されている」
「政府がイニシアチブを取って、選手がずっとスポーツに親しめる
ネットワークを作ってほしい」と願っているが、
待っていても何も変わらない。

まずはできることから、と発足させたクラブ。
「ここから、世界に羽ばたく選手を育てたい」
これからも、朝原は走り続ける。

今の環境を改善するため、
スポーツ基本法の成立が求められている。
日本スポーツ界の“憲法”となる存在。
文部科学省が検討している法案に、「スポーツ権」が書き込まれる。
「すべての人がスポーツを楽しむ権利」――

これを守るため、地域のクラブを中心に、
国がスポーツの強化と普及に力を入れることになる。
「法律の裏付けがあれば、しっかり予算を付けられる」と文科省幹部。
5回目のヒアリングが終わり、来年の通常国会に法案を提出する
準備が進んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/rikkoku/ri20100425_01.htm

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