(読売 5月8日)
「皆さん、まずびっくりしてください。
驚くことから、学問は始まります」。
慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)が開設された20年前、
総合政策学部初代学部長の加藤寛さん(84)は、
1期生にこう語りかけた。
4年後の退任時、SFCを学問発祥の地アテネ、
卒業生を守護神ミネルバのフクロウになぞらえ、
「皆さんが、真っ暗な世界や日本を照らしてください」と呼びかけた。
この演説は、卒業生から現役生へ、今も語り次がれている。
「私は一生教師です」と、この場で語った通り、
千葉商科大学長を経て、2年前から嘉悦大学(東京)でも
学長として、改革の先頭に立つ。
非常勤も含めると、SFC出身の教職員は20人。
充実した情報教育環境の整備、キャンパスの24時間化、
学生が授業の助手役としてかかわる制度の導入など、
ここでもSFC的な世界を広げようとしている。
「学生は未来からの留学生」という、SFCが使い続けてきた
キャッチフレーズを嘉悦大でも掲げ、教育への情熱は衰えない。
国鉄改革で名をはせた経済学者らしく、
「SFCは新幹線。何もないところから作ったから、成功した。
在来線はそうは行かない」
30%を超えていた中退率が、2年目の昨年度は約25%まで低下、
「学生が動けば、大学が動く」と改めて実感。
20年の歴史を刻んだもう一つの学部、環境情報学部初代学部長、
相磯秀夫さん(78)は、大学院委員長として最初の博士を
送り出した9年目で退任。
東京工科大学長を9年務め、同大の改革を進めた。
相磯さんも、「学生に驚きを与えることは、すごく重要。
今は情報過多で、不幸な時代だ」
SFCの最大の特徴である課題発見・課題解決型教育を
工学部(後に理工学部に改組)教授時代から実践し、
情報工学の分野で、坂村健・東大教授ら、数々の人材を送り出してきた。
「大学院生なら、外国へ出て問題を見つけ、
外国のために貢献するのもいい。
それを実践している米国の一流大学は見事だ」
昔から、将来の技術予測を得意としてきた。
発展著しいアジア諸国との共同研究の重要性を指摘、
「新しい時代の産業を考えるのに、大学の役割は大きい」
「日本の大学には、真の国際化が必要。
留学は当たり前。
授業は、原則英語とならざるをえないが、アジアの言葉も意識すべき。
優秀な学生が来るのを待つのではなく、こちらから打って出なければ」
「学生に、昔ほどの元気さがないことが気がかり。
元気さを出してやる環境作りが必要」と、
SFCの学生に思いを巡らせた。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100508-OYT8T00324.htm
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