2010年5月23日日曜日

自殺率「生活保護」2.5倍、失職→困窮→孤立「負の連鎖」

(2010年5月13日 読売新聞)

若者の自殺傾向が強まり、「失業」、「生活苦」を理由にした
自殺者も昨年、急増したことが明らかになった警察庁の自殺統計。
厚生労働省の調査では、全国の生活保護受給者のうち、
昨年自殺した人は1045人、10万人あたりの自殺率は
平均の約2・5倍。

失職をきっかけに経済的困窮を招き、それが社会からの孤立を生む、
という負の連鎖。
生活保護の受給に負い目を感じるというケースもあり、
年々増加する受給者を精神面で、どう支援するのかが課題。

さいたま市岩槻区。
築30年近い2Kのアパートで、生活保護を受けながら一人暮らしをする
男性(64)は毎晩、「生きているのが申し訳ない」という思い。
家庭用品のメーカーで営業職に就いていた男性が、
会社を辞めたのは30歳の時。
妻との離婚がきっかけ。

その後、派遣の仕事を転々とし、昨年2月に“派遣切り”に遭って、
職とともに住居も失った。
日雇いの仕事をしながら、サウナでの仮眠や野宿を繰り返す日々。
「このまま野垂れ死ぬくらいなら……」と、
今年2月、神奈川県内の公園に足を運んだ。
公園の木にロープをくくりつけていると、野犬に追い立てられ、
突然、恐怖心がわき起こった。

支援団体を訪ね、生活保護で住まいと生活のめどだけは立った。
今度は、生活保護を受けていることで自己嫌悪に陥り、
「自殺」の2文字が頭をよぎるようになった。

「周りからさげすまれているようにも感じる。
自分が生きている理由が見つからない」。
男性はそう言って、目を潤ませた。

生活保護受給世帯が、昨年12月に130万7445世帯(速報値)と
過去最高を更新する中、厚労省は今年初めて、
生活保護を受給中に自殺した人を、過去3年さかのぼって調査。

2007年、全国で577人だった自殺者は08年は843人、
昨年は1045人と年々増加、生活保護受給者10万人当たりの
自殺者は昨年で62・4人、全体平均の約2・5倍。
671人が精神疾患を抱え、813人が一人暮らし。

生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとポット」(さいたま市)は、
昨年、311人の困窮者を支援し、その大半が生活保護を受給。
17%の53人が30歳代以下の若者、前年から2・5ポイント増えた。
保護から脱したのは1-2割程度、30歳代の男性が
就職できないことを苦に自殺、誰にもみとられなかった孤独死が3人。

藤田孝典代表理事は、「生活保護で一時的に生活はできても、
社会的に孤立してしまっている。
生活保護は、正当な権利で恥じる必要はないが、
まじめな人ほど、『なぜ仕事に就けないのか』と思い悩むケースが多い。
一人暮らしの受給者が増え、就労以外の社会的居場所を
どう作っていくかを考えていかなくてはいけない

◆自殺対策 自治体で差

政府の「自殺対策緊急戦略チーム」は昨年11月、
「自殺対策100日プラン」を策定、失業者や生活困窮者の
自殺防止を目的に、年末と年度末に全国のハローワークに
相談窓口を開設するなどの対策に取り組んできた。

その結果、昨年9月以降の自殺者は今年4月まで、8か月連続で
前年同期から減少。

今年も年間で最も自殺者が多い3月が、過去3年間で
最少の2898人(暫定値)。
4月までの自殺者は1万309人(同)、なお年間3万人超のペース。

同戦略チームのメンバーでNPO法人
「自殺対策支援センターライフリンク」代表の清水康之さんは、
「政府の対策の直接的効果というより、社会の関心の高まりが
背景にあるのでは。
自治体によって取り組みに差があり、今後はそれぞれの地域で
実態に即した対策を進めるべき

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/5/13/120169/

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