(日経 3月20日)
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が
盛り上がりをみせる一方、不況下で日産自動車野球部、
西武アイスホッケー部など名門チームが相次ぎ休止や廃部を決定。
企業とスポーツの関係のあり方が改めて問われている。
本拠地を首都圏から地方に移し、実力、人気ともに飛躍した
北海道日本ハムファイターズの大社啓二代表取締役オーナーに、
球団経営の姿勢や地方スポーツの活路について聞いた。
——なぜ移転したのか?
「球団を持つ意味が変わったため。
1974年の参入当初は、日本ハムの知名度を高め、
営業面の強力なエンジンとなった。
企業の成長に伴い、球団は戦績も事業価値も必要に。
本拠地が首都圏では、6球団がひしめく。
ファンやメディアを引き付けるのは難しく、都市人口や興行施設の点から
集客ナンバー1になれる地域を探した結果が札幌だった」
——移転に際して何を優先したのか?
「一般企業と同じ、経営理念を共有する体制。
移転当時は、日本ハムに(牛肉偽装の)不祥事が起き、
細かい戦術もなく素手で北海道に行ったようなもの。
『ファンサービス・ファースト』という理念は、スタッフ全員で共有し、行動。
道民球団となるべく、札幌ではなく北海道を冠名にして、
移転前には道内市町村の9割以上にあいさつして回った」
「町役場に行けば、地元メディアや町内報で知らせてくれる。
メジャーリーグをならって、各地でファンクラブ設立を支援し、
株主も日本ハム100%から地元企業10社に入ってもらった。
東京ではできない、地元に密着したPR活動の効果は大きかった」
——経営面で変えたことは?
「入場料収入で成り立つことを基本に考えた。
東京では、ドーム効果で高額のシーズンチケットが売れる一方、
入場料収入はじりじり減っていた。
球団価値とは入場料収入だ。
集客型ビジネスだから、入場者が増えてこそ
球場内の看板の広告価値や放映料が高まる」
「顧客満足も追求し続けた。
参入当初、新庄選手らの人気で女性客が増えていることに気づいた。
常設の物産展や子供向けイベントで、家族でも訪れやすい
雰囲気づくりを進め、女性トイレも増やした。
ファンクラブの4割、ドーム観戦客の半分以上が女性」
「チケットは直接販売し、映像管理も自社に切り替えた。
全国球団ではないので、映像は地域放送で流したり、
衛星波やネットに配信したりする必要がある。
米メジャーのような莫大な放映料収入がない日本では、
むしろ自ら編集・管理した映像を提供する方法が有効だと考え、
映像制作のトレーラーを購入」
——地方スポーツに必要な経営姿勢とは?
「経営の自立と、身の丈にあった計画。
観客を増やして広告や映像、飲食売店の収益を高め、
拠点施設の価値も上げる。
必要な投資額を支えてくれるスポンサーを得るとともに、
収益計画と地域貢献のビジョンをステークホルダーに示せるかどうかだ。
野球なら、球場という公共財を活性化できれば、地域経済に貢献できる」
「勝負は時の運。
勝ちにこだわりすぎると、経営面で負けることになりがち。
経営で負ければ、結局はその地域に存在し続けられない。
ファイターズは、北海道で6年目のシーズンに入ったが、
初の日本一など過去の戦績にとらわれず、
ファンサービスの徹底とスカウト育成による選手強化の2本柱を守っていく。
そこがしっかりできれば、選手年俸で数倍のチームを
経営でも戦績でも上回ることができる」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090319.html
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