2009年3月29日日曜日

北海道日本ハムファイターズの大社啓二オーナー「顧客満足の徹底で負けない経営」

(日経 3月20日)

野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が
盛り上がりをみせる一方、不況下で日産自動車野球部、
西武アイスホッケー部など名門チームが相次ぎ休止や廃部を決定。
企業とスポーツの関係のあり方が改めて問われている。

本拠地を首都圏から地方に移し、実力、人気ともに飛躍した
北海道日本ハムファイターズの大社啓二代表取締役オーナーに、
球団経営の姿勢や地方スポーツの活路について聞いた。

——なぜ移転したのか?

「球団を持つ意味が変わったため。
1974年の参入当初は、日本ハムの知名度を高め、
営業面の強力なエンジンとなった。
企業の成長に伴い、球団は戦績も事業価値も必要に。
本拠地が首都圏では、6球団がひしめく。
ファンやメディアを引き付けるのは難しく、都市人口や興行施設の点から
集客ナンバー1になれる地域を探した結果が札幌だった

——移転に際して何を優先したのか?

「一般企業と同じ、経営理念を共有する体制。
移転当時は、日本ハムに(牛肉偽装の)不祥事が起き、
細かい戦術もなく素手で北海道に行ったようなもの。
『ファンサービス・ファースト』という理念は、スタッフ全員で共有し、行動。
道民球団となるべく、札幌ではなく北海道を冠名にして、
移転前には道内市町村の9割以上にあいさつして回った」

「町役場に行けば、地元メディアや町内報で知らせてくれる。
メジャーリーグをならって、各地でファンクラブ設立を支援し、
株主も日本ハム100%から地元企業10社に入ってもらった。
東京ではできない、地元に密着したPR活動の効果は大きかった

——経営面で変えたことは?

「入場料収入で成り立つことを基本に考えた。
東京では、ドーム効果で高額のシーズンチケットが売れる一方、
入場料収入はじりじり減っていた。
球団価値とは入場料収入だ。
集客型ビジネスだから、入場者が増えてこそ
球場内の看板の広告価値や放映料が高まる」

「顧客満足も追求し続けた。
参入当初、新庄選手らの人気で女性客が増えていることに気づいた。
常設の物産展や子供向けイベントで、家族でも訪れやすい
雰囲気づくりを進め、女性トイレも増やした。
ファンクラブの4割、ドーム観戦客の半分以上が女性

チケットは直接販売し、映像管理も自社に切り替えた。
全国球団ではないので、映像は地域放送で流したり、
衛星波やネットに配信したりする必要がある。
米メジャーのような莫大な放映料収入がない日本では、
むしろ自ら編集・管理した映像を提供する方法が有効だと考え、
映像制作のトレーラーを購入」

——地方スポーツに必要な経営姿勢とは?

経営の自立と、身の丈にあった計画。
観客を増やして広告や映像、飲食売店の収益を高め、
拠点施設の価値も上げる。
必要な投資額を支えてくれるスポンサーを得るとともに、
収益計画と地域貢献のビジョンをステークホルダーに示せるかどうかだ。
野球なら、球場という公共財を活性化できれば、地域経済に貢献できる

「勝負は時の運。
勝ちにこだわりすぎると、経営面で負けることになりがち。
経営で負ければ、結局はその地域に存在し続けられない。
ファイターズは、北海道で6年目のシーズンに入ったが、
初の日本一など過去の戦績にとらわれず、
ファンサービスの徹底とスカウト育成による選手強化の2本柱を守っていく。
そこがしっかりできれば、選手年俸で数倍のチームを
経営でも戦績でも上回ることができる」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090319.html

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