(日経 2009-03-20)
静止軌道上の人工衛星で太陽光を利用して発電、
地上に送る宇宙太陽光発電への取り組みが本格化。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが、2009年度から実証的な研究を
始める予定で、宇宙基本計画でもテーマに。
環境負荷の少ない新エネルギー源としてだけでなく、
日本の宇宙開発のレベルを押し上げる推進力としての役割も期待。
JAXA高度ミッション研究センターの福室康行研究計画マネージャは、
「個々の要素技術はほとんどできている。
実際にやってみようという段階に入った」
宇宙太陽光発電のアイデアそのものは以前からあり、
1960年代末に米国のピーター・グレーザー博士が提案したのが初め。
内外で何度か注目を集めたが、まだ概念先行。
今回、ようやく具体的に検討できるレベルまで基礎技術が育ってきた。
新年度からの5年は、地上でマイクロ波やレーザーを使った
送電の確認実験や精度を上げる研究などを実施。
続く5年で、小型衛星を使った宇宙での実験、
2030年、原子力発電所1基分に相当する出力100万キロワット時の
プラントを建設するのが目標。
地上と違って、宇宙なら雨など天候の影響を受けず、
夜もないに等しいので、ほぼ24時間365日発電が可能。
発電効率は地上の5-10倍、環境負荷の点では
CO2を排出しない理想的なエネルギー源。
プラントは、1キロワット時当たり8-10円の発電コストを目標、
現在の発電所とほぼ同等。
建設費は、宇宙への輸送コストなどを含めて2兆-3兆円。
新設費用が4000億-5000億円程度とされる原発の数基分になるが、
原発は使用済み燃料や廃炉の処理にかなりの費用がかかり、
トータルコストでみれば競争力はある。
宇宙太陽光発電の研究は、米国や欧州でも進められ、
カギを握るマイクロ波やレーザーを使った送電技術は
「日本が1番進んでいる」(福室マネージャ)。
大阪大学などが、太陽光を効率よくレーザー光に変換する技術を開発、
京都大学が、飛行船からマイクロ波で送電して携帯電話を充電する実験を
公開するなどの成果があがっている。
太陽電池の技術も、日本は世界のトップグループ。
送電と合わせた宇宙太陽光発電システム全体では、
世界をリードできる立場。
宇宙開発で、米国やロシアなどに後れを取っているが、
初めて日本がリーダーとなって進めるプロジェクトになる可能性。
総重量が5000トンから1万トンに達する発電衛星を軌道上に建設するには、
輸送システムや宇宙で巨大な構造物を建設する技術など、
様々な技術やノウハウを確立していかねばならない。
将来の目標として月面基地建設などが検討されているが、
宇宙太陽光発電は、目標遂行を支える技術やノウハウを育てる
ゆりかごになりうる。
宇宙開発ではまだ発展途上国の日本が、
米ロなどと肩を並べるための第一歩に、宇宙太陽光発電はなるかもしれない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090318.html
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