2009年4月14日火曜日

「グランドスラム」への扉(1)盛田正明氏 トップ選手育成へファンド

(日経 3月4日)

日本男子で、16年ぶりの世界ツアー優勝を飾ったテニスの錦織圭選手。
成長を支えたのは、ソニー元副社長で日本テニス協会会長の盛田正明氏。
私財を投じて基金を設立し、世界レベルのトップ選手育成に情熱。

70歳でソニーグループを引退し、経営者としての夢がなくなった。
死ぬまで追いかけられる次の夢は何だろうか?
まずは自分が熱中できること。

思い浮かんだのは、テニス。長年テニスが趣味。
仕事で知り合った世界中の友人や兄の昭夫(ソニー創業者、故人)と
テニスをしてきた。仕事で疲れても、テニスをすると頭がスッキリした。

スポーツマーケティング最大手、米IMGの創業者である
マーク・マコーマックさん(故人)も、テニス友達の1人。
英ウィンブルドン選手権や全米オープンに招待してくれ、毎年観戦に。

決勝戦でプレーしているのは、外国人選手ばかり。
日本人がいないことが寂しかった。
自分が選手になることはできない。
子供の夢を、自分の夢として追いかけることができるのではないか?

そう考えて、2000年にジュニア選手を育成する
「盛田正明テニス・ファンド」を設立。
テニス選手を育てるにあたって、ソニーでたたき込まれた
「人がやらないことをやる」という目標を設定。

井深大さん(ソニー創業者、故人)は、「人がやらないことをやれ」。
テープレコーダーやトランジスタラジオなど、世の中にない製品を
作るのがモットーで、私もそういう考えが身についている。

井深さんは、すごい目標を設定する。
カセットテープの大きさを半分にしろと言われた。
「とてもできない」と答えると、「できない理由を言ってみろ」と反論。
達成できそうな目標は、過去の経験を生かせる。

普通の努力ではとても無理な目標を達成するには、
ゼロから考える創造性が求められる。
奨学金制度はたくさんあるが、人がやったことがない
「グランドスラムで優勝できる選手を育てる」という目標を設定。

決して不可能な目標ではない。
これまで13人のジュニア選手を米国留学させ、
その中から錦織選手が出てきた。
2月、世界ランクが50位台まで上がった。
最初はトッププロになれるのか、誰も分からなかった。
人の成長というものは様々な条件や環境が関係し、とても複雑なもの。

ソニーグループの技術者、経営者時代を通じてテニスに親しみ、
今は日本テニス協会の会長を務めている。
いつもそのときに与えられた状況を楽しみながら、
夢を追いかけてきた私の半生を振り返ってみたい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/hiroku/hir090303.html

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