2010年4月12日月曜日

全国学力テスト(3)道徳 学習意欲に効果

(読売 4月2日)

「清掃開始!90分間、無言で頑張ろう」。
校内放送が流れ、1年生90人が一斉にトイレ掃除を始めた。
自分に割り当てられた便器1個を、30分間黙々と磨き、
壁や床も隅々まできれいにする。
野藤等校長(59)ら教師も、生徒と一緒に掃除に励んだ。

瀬戸大橋の四国側のたもとにある香川県坂出市立東部中学校
各学年とも年1回行う「清掃に学ぶ集い」。
1998年に始まり、3月9日で35回目。

この伝統行事を守る同校の道徳教育が、
学力向上効果があるとして注目。

同校が、「全国学力テストの無回答率が低い」と、
国立教育政策研究所から指摘を受けたのは、2009年1月。
最も無回答率が高い数学Bでも4・3%、
全国平均13・1%の3分の1。
同研究所は、背景に道徳教育の充実があると分析。

「点数しか目に入らない我々とは違う視点。
思わぬ効果を気づかされた」と野藤校長。

同校の道徳教育は、副読本「心のノート」の活用が中心。
道徳の授業のほか、朝礼で校長が引用したり、
体育祭や文化祭などの行事と関連づけたりするなど幅広く使い、
共感や友情を育んでいる。
野球の四国・九州アイランドリーグで奮闘する選手などを招き、
「夢を実現するために」といった講演会も開く。

「国語や数学などでは目立たない生徒が、道徳の時間に発言し、
表情が輝くこともある」と谷本里都子教諭(45)。
友達の意見を聞いて、自分の考えを深める過程で、
論理的思考力も身に着く。

同研究所の分析によると、無回答率の低さは、道徳教育で
生徒の心が落ち着き、学習意欲につながったから。
トイレ清掃後の感想文は、「心がスッキリした」、
「人のいやがることを進んでやりたい」、
「一生懸命やることを大切にしたい」など、
生徒の気持ちの変化が表れている。

同研究所は、学校が生徒の声に耳を傾ける姿勢も根底に。
教師の授業中の話し方や板書の読みやすさ、
具体的な要望を生徒に尋ねる「授業評価アンケート」を、年2回実施。
生徒から、「自分の要望を先生が取り入れて、うれしかった」など好評。

教師への信頼感が、学習意欲を引き出している。

◆心のノート

道徳教科の副読本で、小学校低、中、高学年向けと、中学用の4種類。
心理学者の河合隼雄さんの監修、2002年に作られた。
事業仕分けで「大幅縮減」とされ、11年度分から一律配布がなくなる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100402-OYT8T00212.htm

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