2010年4月14日水曜日

自殺防止で広がる僧侶連携 存在感増す"駆け込み寺" 22都道県に宗派超え

(2010年4月7日 共同通信社)

「お寺には、生きているうちに来てほしい」-。
自殺防止のため、千葉県の僧侶らが宗派を超えて立ち上げた
NPO法人「自殺防止ネットワーク『風』」(同県成田市)の輪が
広がっている。

2009年3月の設立以来、全国から参加が相次ぎ、
"駆け込み寺"の相談窓口は、22都道県と米ハワイの
計37カ所に増えた。

理事長を務める長寿院(成田市)の篠原鋭一住職(65)は、
「それでも相談が殺到し、とても追いつかない」

相談には一切、時間制限を設けない。
「自分からは質問せず、丸ごと受け止める」のが方針。

相手と向き合い、"沈黙"から始まる。
窓の外に広がる木々をじっと見つめると、相談者は
「ほっとしますね」とぽつり。
「長く心の奥に苦悩が居座っている。うまく話せるわけがない」と住職。
気づけば、対話を始めてから11時間たっていたことも。

深夜の電話にも、静かに耳を傾ける。
「失敗しちゃいました...」。1人暮らしの高齢女性から。
産み育てた5人の子どもは、5年間、誰も会いにこない。
手紙の返事もない。
「私は捨てられた人間です」。
死を決意し、かもいにかけた縄はプツリと切れた。

消え入りそうな声で女性は言った。
「明日、もっと強い縄をもってきてくれませんか」-。

本当は生きたいのに、社会の矛盾を個人が背負わされ、
孤立したまま死へと追い込まれている。
社会が連帯して、自殺防止に取り組まなければ」と篠原住職。

相談を受け始めたのは、1992年ごろ。
以来、年中無休・24時間態勢で取り組み、
相談者は延べ6千人を超えた。

篠原住職は、「お寺は亡くなった人のためだけにあるのではない。
今生きて苦悩している人々に、二度とない人生を
『生ききった』と言ってもらえるような羅針盤の役割こそ、
われわれ僧侶が果たすべきだ」と力を込める。

警察庁によると、09年の自殺者は3万2千人余り。
1998年から12年連続で3万人を超えている。

「各都道府県に複数の相談窓口ができれば」と、
目標を語る篠原住職。
将来的には、僧侶と心療内科医の連携など、
総合的な自殺防止の対策も視野に入れていく。

相談・問い合わせは、同NPO法人東京相談所、
電話03(6383)2012。
http://www.soudannet-kaze.jp/

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/7/118676/

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