(2010年8月20日 読売新聞)
人の「意思」で動くロボットの利用が、
医療や介護の現場で広がっている。
ロボットスーツ「HAL(ハル)」の訓練施設が、つくば市にオープン。
最先端技術がリハビリをサポートするのは、
サイボーグ世界をほうふつさせる。
励みにつながる意外な効果もみられる。
飯能市の飯能靖和病院で、両脚にHALを装着した男性(75)が、
かすかなモーター音とともに、段差10cmの階段で
上り下りを繰り返した。
「階段を上れるようになるとは思わなかった」とうれしそう。
見守る医療スタッフから、「すごい」と歓声。
男性は、4月に脳卒中で左半身がマヒ。
5月下旬、HALを取り入れたリハビリを始めた。
座ったまま足を曲げ伸ばししたり、立つ座るを繰り返したり、
段階に応じて新しい動きに挑戦。
練習を積んできた男性は、「最初は、HALに引っ張られるような
感じだったが、今はつえをつきながら歩けるように。
日本が作った最先端のロボットを、着けられることもうれしい」
リハビリを担当する大沢愛子医師(35)は、
「HALで動けるようになると、つらいリハビリにも希望が持てる。
ロボットを使える楽しさも大きい」
HALは、全国の病院や介護施設など37施設で導入。
筑波大の山海嘉之教授(52)は、
「人生80年、身体機能低下の傾きを、少しでもなだらかにし、
元気で暮らせるようになればいい。
将来的には、家庭で使えるようにしたい」
山海教授が社長を務めるベンチャー企業「サイバーダイン」は、
障害者らがトレーニングできる施設を、つくば市に開設。
理学療法士らがサポート、症例を集めて今後に生かす狙い。
茨城県は、生活支援ロボットの開発を促そうと、
約1億6000万円で30体を導入。
県立医療大では6月から、脊髄損傷で車いすを使っている人や、
脳卒中でマヒが残る人など10人に装着。
着脱の難しさや費用などの面で、課題もある。
同大の居村茂幸教授(61)は、「マヒで必要以上に、
緊張した筋肉に対応困難な場合がある」と指摘、
利用者の視点を生かしながら、細かい症状に対応できるように研究。
日本は、介護ロボットの分野で、「世界市場を獲得する」を目指す。
大手自動車や家電メーカーなども、相次いで参入。
経済産業省は、「高齢化社会で、介護ロボットは大きな意味を持つ。
ニーズも高い」(産業機械課)、
普及のため、安全基準づくりを進めている。
◆HAL
サイバーダインが、09年発売した世界初の福祉用ロボットスーツ。
体を動かそうとするときに出る微弱な「生体電位信号」を
センサーでとらえ、モーターを動かして手足の動きを
サポートする仕組み。
動きたくない意思が伝われば、その動きも止まる。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/20/124277/
0 件のコメント:
コメントを投稿