2010年9月1日水曜日

実感する理科(4)専科教員、校内に「博物館」

(読売 8月21日)

放課後、杉並区立井荻小学校の理科室は、
児童が自由に出入りし、授業とは違った活気に包まれる。

図鑑に見入ったり、骨格標本や磁石で連結する
原子模型に夢中になったり、集まる児童の目的は様々。
理科室前の廊下には、キアゲハの幼虫やカブトムシ、
ヤゴ(トンボの幼虫)の入った水槽もある。

「先生、これすごいでしょ」
校庭に通じる入り口から、児童が持ってきたのは
猫じゃらし(エノコログサ)。
穂先が三つに割れている。

理科室に常駐する理科専科教員の古野博教諭(47)が、
「珍しいね、どこで見つけたの。
ほかにもないか探してごらんよ」と促すと、
児童は再び校庭にかけ出した。

ミニ博物館のような理科室を作った古野教諭は、
「何かに興味を持ち、寄ってくれたらうれしい。
目指すは、『知の駄菓子屋』」

古野教諭は、科学教育の普及に努めるNPO法人「ガリレオ工房」
の会員で、月1回の研究会に顔を出し、
授業で使える実験や教材などの情報交換。

理科室には、科学関係の児童書が集められ、
学校の蔵書と古野教諭所有分を合わせて約150冊。
窓越しに表紙が見えるように並べられ、ショーウインドーのよう。

自由に触ることのできる魚の解剖模型や科学教材も陳列。
廊下に並ぶ生き物は、地元のNPO法人「すぎなみ環境ネットワーク」の
協力で集められた。
顕微鏡も、「たとえ壊れても、戸棚の奥に眠っているより
毎日使った方がいい」(古野教諭)と貸し出し。

科学教育の振興・推進を掲げる杉並区は、
今年度から理科専科教員の積極的配置を始めた。
理科好きな児童を増やすため、体験重視の教育環境を作るのが狙い、
区内43小学校のうち、理科専科教員は23校25人。

専科教員は、基本的に担任を持たず、授業に専念できる。
井荻小の理科室は、この余裕から生まれた。
古野教諭は、「授業で教える内容は、最低限の範囲なので、
もっと知りたい児童の受け皿として、理科室を生かした。
安全に注意を払いつつ、児童が自主的に使えるようにしたい」

◆理科専科教員

08年、科学技術振興機構などが行った
小学校理科教育実態調査によると、約27%が理科専科の
教員を配置。
専科教員は、音楽、家庭科など実技系教科に置かれることが多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100821-OYT8T00149.htm

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