2010年8月14日土曜日

熱中症:高齢者、室内でも注意 気付かず重症化…気温上昇、脱水

(2010年8月3日 毎日新聞社)

自宅で、熱中症を発症する人が増えている。
室内は注意を怠りがちだが、特に高齢者や体が弱っている人には、
屋外と変わらない危険がある。
注意点や発症した際の対処法などを専門家に聞いた。

◇28度、湿度70%超で冷房 こまめに水分補給を

独立行政法人・国立環境研究所のまとめでは、
09年夏、熱中症で救急搬送された20都県市の2835人のうち、
自宅での発症が591人(21%)で最も多かった。

三宅康史・昭和大准教授は、
「今の住宅は、密閉性が高く風通しが悪く、窓を閉め切り冷房を使わないと、
室内は外気温以上に上がる。
高齢化で、体温の調節機能が衰え熱中症になりやすい高齢者が
室内にいる割合が高くなった

人間の体は暑さを感じると、皮膚に血液を多く流したり、
汗を出して体温を下げる。
血液には熱を運ぶ役割があり、皮膚を流れる血管を通る時に
熱を外に出す。
汗は、体から蒸発する時に体の熱も一緒に放出。

気温が高い状態が長く続くと、大量に発汗して水分や塩分が失われ、
血液中の水分を奪い、汗が出なくなったり、臓器に流れる血流量に影響。
気温が30度を超えなくても、湿度が高いと、汗が蒸発せず、
皮膚の表面にたまり、熱もこもったままになる。
こうしたバランスの崩れが、熱中症の症状を引き起こす。

今夏の室内での死亡例を見ると、
エアコンが作動していなかったケースが目立つ。

大阪市内のマンションで、南側ベランダに面した寝室のベッドで妻(87)が、
隣室との敷居辺りで夫(79)が、亡くなっていた。
寝室は、扇風機が1台作動、窓は少し開いていたが、エアコンはなかった。
さいたま市内で、女性(81)が寝室ベッドで死亡。
女性は、エアコンが嫌いで日ごろからスイッチを切っていた。

日本救急医学会が、救急搬送を受け入れる全国82の施設を、
08年6~9月に熱中症で受診した913人を調べたところ、
屋内で発症した123人のうち、エアコンを「停止中・設置なし」52%、
「使用中」13%。
高齢者や重症者ほど、使わない傾向が高かった。

調査責任者の三宅准教授は、「室内は決して安全な場所でないと
肝に銘じ、湿度計付き温度計を置き、
室温28度、湿度70%を超えたら、エアコンを使ってほしい。
例年、患者のピークはお盆ごろまで。
あと約2週間を乗り切って」

室温調整とともに重要なのが、水分補給。
筑波メディカルセンター病院の管理栄養士、遠藤祥子さんは、
「のどの渇きを感じる前に、こまめに水分を取るよう心がけて」

男性は体重の約60%、女性は約55%が水分。
体重60kgの男性の場合、36kg(36L)、
汗や排せつなどで、1日計2・5Lが体外に出ているが、
食事と飲料、体内で作られる代謝水で計約2・5L補い、
バランスを保っている。

水分補給は、室内で普通に生活したり軽く汗ばむ程度なら、
水か甘くないお茶で十分。
冷たすぎるとおなかを壊しがちだが、熱中症の発症後には効果的。
吸収が速いうえ、体温を素早く下げる。
利尿作用があるアルコールや糖分が多いジュース類は、
脱水を進めるため不向き。

発熱や下痢をしている人は、かかりつけ医に相談。
水分は、トマトやキュウリ、スイカ、みそ汁やスープ類でも補える。
塩分や糖分の取り過ぎに気をつけ、上手に水分コントロールしたい。

消防庁消防・救急課によると、今年5月31日~7月25日、
熱中症のため救急搬送された人は全国で1万5114人、
46・4%にあたる7014人が65歳以上。

高齢者が熱中症になりやすいのは、主に加齢による体の衰えが原因。
気温の上昇に鈍感になり、脱水症状が始まっても、
自分で体の異変に気付きにくくなる。
家族ら周囲も察知しにくく、救急搬送されるまで
異変が分からないことも多い。
高血圧や糖尿病など、持病がある人も重症化しやすい。

屋内で家族が熱中症になったら、どう対処すればいいのか?

日本赤十字社「赤十字救急法講習教本」などによると、
最初に涼しい所に移動させ、話しかけながら
リラックスできる体勢を取らせる。
首筋や脇の下、脚の付け根などを冷たいペットボトルで冷やすと、
太い血管を通る血液が冷やされ、体全体の冷却効果がある。

日赤健康安全課の鈴木隆則指導係長は、
「お年寄りの場合、体温が40度近くになると脳、心臓、腎臓、肝臓などの
臓器不全を起こしやすい。
流水をかけ続けたりして体を急に冷やすと、
低体温症に陥る危険性がある」、適切な対応を呼びかける。
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◆熱中症の主な症状

1度(熱失神・熱けいれん、現場での応急処置で対応できる軽症)
=めまい、失神、筋肉痛、こむら返り、大量の発汗

2度(熱疲労、病院搬送が必要な中等症)
=頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感

3度(熱射病、入院して集中治療が必要な重症)
=意識障害、けいれん、手足の運動障害、体に触ると熱いぐらいの高体温
※日本救急医学会の資料から
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◇家族が熱中症になったら

(1)涼しい場所に移し、衣服をゆるめてリラックスさせる
(2)首筋、脇の下、脚の付け根を冷やす
(3)顔が赤いときは頭を高く、青白ければ足を高くして寝かせる
(4)意識があり、嘔吐がなければ水分補給させる
(5)皮膚が熱ければ、風を送ったり熱い部分にぬれタオルを当てる
(6)皮膚が冷たければぬれタオルをしぼり冷たい部分をマッサージ
(7)意識がなかったり、急に体温が上がったらすぐ救急車を呼ぶ
※日本赤十字社への取材を基に作成

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/3/123586/

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