2010年8月8日日曜日

中国のスポーツ政策

(sfen)

◆政策の展開と行政組織

中国のスポーツに関する行政改革は、
「改革・開放」を目指す国家行政改革の一環として、
1978年より活発に行われてきた。
その結果、中国のスポーツ政策は、「国家が行政を統制する」
ことから、「行政を支援する」ことへと転換、発展。

中国のスポーツ政策は、2008年北京オリンピック開催を契機に、
法制度などの整備が進み、北京オリンピック後は、
一般国民のスポーツ参加、競技スポーツ、学校体育、
スポーツ産業、スポーツの国際交流などの多方面で
推進が図られ、総合的に展開。

競技スポーツについて、北京オリンピックで51個の金メダルと
パラリンピックで89個の金メダルを獲得、
金メダル総数で世界1位となった。

中国のスポーツ政策は、国務院の中央行政組織を中心に、
スポーツに関する法律及び計画などを整備して、
体系的かつ計画的に実施。

中国のスポーツ行政組織は、1949年新中国の建国以後、
国務院直属の行政機構である「国家体育委員会」によって所管、
1978年から2001年にわたる国務院の機構改革に伴い、
1998年「国家体育総局」に改組。

国家体育総局には、弁公庁、大衆体育司、競技体育司、
政策法規司、体育経済司、対外連絡司、人事司、科教司、宣伝司、
機関党委員会、監察局、退職幹部局の12の機関司局と、
登山センターなど各種管理サービスセンターや
北京体育大学などを含む、43の直属事業単位から構成。

各体育協会、スポーツ連盟、中国オリンピック委員会、
その他の社会団体など、95の管理社会組織がある。
学校体育について、国務院構成部門である国家教育部の
体育衛生及び芸術教育司が担当。

◆中国のスポーツ政策法規とその体系

2009年、「全国体育政策法規会議」において、
国家体育総局副局長肖天氏は、中国におけるスポーツの
国家戦略として、将来、体育政策法規に関する新たな任務、
方法、理念、目標を明確にしていく。

現在の中国の体育政策法規は、1995年8月29日、
「中華人民共和国体育法」を基本に、関連する行政法規、
中央文書、部門規章(行政命令)、規範性文書及び地方立法に
よって体系化、総合的に制度構築と政策実施が図られている。

生涯スポーツ及び競技スポーツに関係する法規だけでなく、
スポーツの経済、人事・資格、教育、宣伝、外交など、
日本に比べ、非常に広範囲にスポーツ法の整備が進んでいる。

主要な行政法規として、
・国家体育鍛錬標準施行方法(1990年1月6日公布)
・学校体育工作条例(1990年3月12日公布)
・中国来訪外国人登山管理方法(1991年8月29日公布)
・国務院弁公庁転発、国家体育総局、民政部、公安部の健身気功活動
 の管理に関連する問題についての意見通知(1999年8月29日)
・オリンピック標識保護条例(2002年2月4日公布)
・公共文化体育施設条例(2003年6月26日公布)
・反ドーピング条例(2004年1月13日公布)
・くじ管理条例(2009年5月4日)
・全民健身条例(2009年8月30日公布)

主要な中央文書として、
・中共中央国務院、青少年の体育の強化及び青少年の体質の増強に
 関する意見(2007年5月7日公布)
・国家体育総局、民政部、公安部の健身気功活動の管理に関連する
 問題についての意見(1999年8月29日)
・国家体育委員会、県級体育事業の改革の深化及び
 発展の加速についての意見(1996年11月25日)
・全民健身計画綱要(1995年6月20日公布)
・中共中央国務院、新時期体育工作の強化改進についての意見
 (2002年7月22日)

部門規章(行政命令)として、
・社会体育指導員技術等級制度(1993年12月4日公布)
・体育統計工作管理方法(1991年12月6日公布)
・体育事業十五計画(2006年7月11日公布)
・体育道徳建設の強化に関する意見(2002年11月18日)
・2001-2010年体育改革発展綱要(2000年12月15日)
・全国自動車競技管理規定(2001年10月12日公布)
・全国的体育社会団体暫定管理方法(2010年2月3日公布)

規範性文書として、
・仲裁委員会条例(1982年7月29日公布)など

◆中国体育法の構造と特色

1995年、中華人民共和国体育法(「中国体育法」)は、
建国以来はじめてとなる体育及びスポーツに関する基本法。

中国体育法は当初、第1章総則、第2章社会体育、
第3章学校体育、第4章競技体育、第5章体育社会団体、
第6章保障条件、第7章法律責任、第8章附則の全8章56条から構成。

スポーツ用品・用具の検定に関する47条の規定は、
社会主義市場経済及び社会発展の要求に適応していないことを
理由に、2009年に削除。

中国体育法の構造上の特色として、学校体育に関すること、
社会体育及び競技体育に関すること、
スポーツに関する両方の基本が定められている。

日本のスポーツ振興法が、スポーツ振興のための行政の施策を
主に定めているのに対し、中国体育法は体育社会団体に関する
章を設けて、関連する体育・スポーツ関係団体をあわせて
規律している点が異なっている。

中国体育法は、第7章で法律責任を定め、規律違反、ドーピング違反、
八百長、賭博、不正流用、不法占拠、騒動等のそれぞれの
違反行為に対する民事責任、行政責任、刑事責任を定め、
この点も日本のスポーツ振興法と異なる。

◆中国体育法の内容と特色

中国のスポーツ法は、「中国体育法」を基本法とし、
人権、倫理、ドーピング、仲裁、標章、国際交流など、
国際的なスポーツ政策法規の動向を取り入れながら、
中国の体制にも適応した諸措置を定め、
今後も下位の特別な法令を整備しながら発展することが予測。

日本に比べ、中国のスポーツ法の整備は、スポーツ政策の
重要な事項として扱われている。

◆中国体育法の内容と特色

(1)総則

法律の目的(1条)、国家による体育事業の発展(2条)、
体育事業の計画経済への導入と管理体制(3条)、
中央及び地方の体育行政部門(4条)について定め、
特に青年・少年・児童(5条)、少数民族(6条)の
体育活動の保障を定めている。

第16条では、高齢者、障害者の体育活動を奨励することも定め、
人権等に配慮した規定が存在。
対外体育交流の原則と関連する国際条約を遵守すること(9条)、
国際交流が大きな政策方針の1つとして掲げられている。

(2)社会体育

社会体育活動の奨励を、単に地方政府を政策主体の単位として
示すだけでなく、都市・農村(12条)、企業・事業組織(13条)、
労働組合(14条)、民族伝統種目(15条)、高齢者・障害者(16条)
などの組織構成単位に分けて定めている。

第11条では、体育鍛錬標準制度と社会体育指導員技術等等級制度
の実施について定めている。

(3)学校体育

教育行政部門及び学校教育上の構成部分としての体育を認め(17条)、
学校における体育の必置(18条)、国家体育鍛錬標準の実施及び
体育活動時間の保証を定めている(19条)。

学校における課外体育活動及び全校体育運動会の組織(20条)、
体育教師の配置と勤務・待遇面の保障(21条)、
学校体育施設・設備の設置及び使途(22条)、
学生体格健康検査制度(23条)について定めている。

(4)競技体育

アマチュア体育訓練の奨励、優秀な予備人材の養成(25条)、
優秀運動選手及びチームの選抜と編成(26条)、
運動選手の育成と教育(27条)、
優秀運動選手の就職及び学業面での優遇(28条)、
運動選手の登録管理と人員交流(29条)、
専門技術職等級制度(30条)、
競技の種目別・級別管理と総合的な競技会の管理(31条)、
全国記録審査制度(32条)など、
競技スポーツのための諸措置を定めている。

優秀な選手の選抜養成だけでなく、
専門職化やキャリアサポートにも配慮。
34条では、競技における公平競争の原則、道徳の遵守、
不正行為の禁止を掲げ、紛争が生じた場合の仲裁機関の
設置を定めている(33条)。
競技会の名称、旗、マスコット等の標識の保護を定めている(35条)。

以上のように、中国体育法における競技スポーツに関する規定は、
日本のスポーツ振興法に比べ、多様かつ具体的に定められている。

(5)体育社会団体

各級体育総会(37条)、中国オリンピック委員会(38条)、
体育科学社会団体(39条)、種目別体育協会(40条)を定め、
関連する体育社会団体が果たす社会的な役割を認め、
その組織活動を奨励することを定めている。

(6)保障条件

地方人民政府の予算及び計画に体育予算を組み込むこと(41条)、
企業・事業組織及び社会団体の自己資金及び寄付による
体育事業の奨励(42条)、
国家の体育資金の管理強化と不正流用の禁止(43条)、
体育に関する経営活動に対する地方体育行政部門による監督(44条)、
地方、都市及び農村における公共体育施設の計画(45条)、
公共体育施設の開放及び使用(46条)、
体育系専門大学等における体育専門人材の養成(48条)。

(7)法律責任

(8)附則

◆張林芳

中国北京師範大学大学院体育人文社会学専攻修士修了後、
日本の国立鹿屋体育大学大学院で体育学専攻修士号を取得、
日本筑波大学博士課程人間総合科学研究科・
体育科学専攻研究生を修了。
中国内モングル呼倫貝爾学院体育学院の准教授、
現在、筑波大学人間総合科学研究科外国人受託研究員として
研究活動を進めている。
専門分野は、スポーツ経営・スポーツ政策。
研究領域は、日中両国におけるスポーツ法学及び政策。

http://www.ssf.or.jp/sfen/sports/sports_vol5-1.html

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