2009年7月29日水曜日

医療・健康・介護分野の研究に大きな期待

(サイエンスポータル 2009年7月24日)

国民が求める先端的研究として期待が大きいのは、
「医療・健康・介護」分野であることが、
内閣府の意見募集結果で明らかに。

意見募集は、今年度補正予算で発足することになった
「最先端研究開発支援プログラム」の研究課題選定資料にするため、
内閣府がホームページで募った。
6月21日~7月21日に、606人から911件の意見が寄せられた。

プログラムは、まだ国民の多くに知られているとは言えず、
意見を寄せたのは科学技術に関心が高い人々に限られ、
“科学リテラシー”が比較的高い層の科学技術に対する
期待傾向をうかがうデータとして相応の意味はありそう。

606人の回答者の内訳を見ると、
30代、40代が最も多く、全体の約半数(50.3%)。
50代19.5%、20代12.4%。10代はわずか1.5%と60代、70代よりも少ない。
若者に期待する人たちには、物足りなさを感じる反応ではないか。

性別でも、男性が78%、女性は22%。
研究分野における女性の活躍を期待する人たちには、
こちらの数字も不満。

職業別の内訳を紹介すると、会社員36.1%、研究者17.3%、
主婦9.7%、学生8.4%の順。
公務員は3.8%と、会社役員4.6%、自営業4.0%のさらに下、
人口比からいうとこんなものなのだろうか。
主婦が女性回答者の45%を占め、これも妥当な数値なのだろうか。

肝心の意見募集の結果。
最も期待を集めた「医療・健康・介護」(全体の約35%)の中で、
一番期待が高いのは、「がん治療の確立や普及」。
これは、がんが日本人の死因の1位で、うなずける結果。

「再生医療の実用化」。
これは、iPS(人工多能性幹)細胞で、再生医療に対する関心と期待が
急激に高まったことの反映。

「痴呆症やアルツハイマーの治療の確立と普及」、
「うつ病等精神疾患の治療の確立と普及」、
「パーキンソン症候群の治療の確立と普及」となっている。

日本人の死因の2、3位を占める「心疾患」、「脳血管疾患」より、
これらの具体的疾患が上位に来ていることは、注目。
実際に、自分自身あるいは周辺に実際に困っている、悩んでいる人が多い
現実の反映とすると、公費を投入する優先度に影響を与えて
しかるべきとも考えられる。

「医療・健康・介護」に次いで期待を集めたのは「環境・エネルギー」(約29%)、
「交通・通信」(約11%)、「食・食品」(約7%)、「安全・安心」(約6%)の順。
「資源対策や地球温暖化対策のための太陽光やバイオ技術を
利用した新エネルギー等への転換」が、
「環境・エネルギー」の中の半数以上を占めている。

「食品の安全性を高める技術の向上」は、回答全体の2%以下。
食品の安全に関する技術ほど、取り上げられることが少ない
「交通事故防止や交通事故死をゼロにするための自動車開発や
インフラ整備」の方が、3%近い回答。

「最先端研究開発支援プログラム」は、
「新たな知を創造する基礎研究から、出口を見据えた研究開発まで、
さまざまな分野、ステージを対象とした先端的研究課題のうち、
3~5年間で世界をリードし、世界のトップを目指す研究課題」
30程度を選び、1件当たり30~150億円の研究開発費を投じる。

一般からの意見募集結果は、申請された中から、
中心研究者と課題の選定作業を担う
「最先端研究開発支援ワーキングチーム」に、参考資料として配布。

http://scienceportal.jp/news/review/0907/0907241.html

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