(2009年7月21日 毎日新聞社)
背後から忍び寄って来るならず者。
「何やつ」。刀を抜いて、キン、キンキン。
崩れ落ちる相手を背にし、くっと血を振った刀をカチリと納める……。
子どものころ、男子たちのチャンバラを指をくわえて見てたっけ。
俳優志望でなくても学べる殺陣講座があると聞き、
東放エンターテイメントスクール大阪校内にある
「日本殺陣道協会」を訪ねた。
子どもからお年寄りまでいる受講生で、多いのは30代の女性会社員。
人気の秘密は?
木刀を握るのも初めての記者。
殺陣を始めて3カ月の高校1年、島津清芳さん(15)を相手役に、
体験レッスンを受けた。
裸足になり、まず正座。
木刀は右脇に、手を伸ばした所につばがくるように置く。
すると、「それでいい?」と師範の永原享さん(56)。
考えていると、記者の後ろに回り、親指が重なっている所を足でぐいっ。
痛い!
「指を重ねたら、こうして踏まれて殺される」
相手に先手を取られない、侍の心得が身に染みる。
教室の正面と練習生同士で礼をして、ストレッチ。
終わると木刀を握る。
殺陣道協会は、基本型として35手を教えるが、
中でも基本は、刀を正面に構える「正眼」。
剣先を相手ののど元に向けると、相手は刀が一点に見え、
攻撃に出にくい。
よく時代劇で見かけるのは、顔の右横に持ち手をもってくる「八双」。
切り方も、真上から下に切り落とす「真っ向切り」、
斜めに切る「袈裟切り」とさまざま。
が、どの型も不自然な記者。
「歩幅をとってない。刀が体と一体になってない」と永原さん。
両足をやや開き、刀が腕と一直線上になるように意識すると、ましに。
簡単な立ち回りにも挑戦したが、
血振りして納刀すると、何とも言えぬ壮快感だ。
後日、平日夜の講座をのぞいてみた。
この日は中学生、女性会社員、定年退職した男性ら10人が参加。
殺陣の魅力は、「切った瞬間の心地よさが最高!」と、
大阪府寝屋川市の会社員、古川真生さん(30)。
ストレス発散、運動など理由はさまざまだが、
時代劇好きは共通しているよう。
立ち回りは、圧巻。
「真っ向、(頭上で刃先を横に傾ける)『やなぎ』で受けて、
振り向いて袈裟切り」。
即興でつけた振りをすぐにのみ込み、舞うように切り合う。
鋭い眼光、凜と響くかけ声……。
ぴりぴりとした緊張感の中でも、動きは軽やかだ。
永原さんは、「型が体に染み込まないと、自然にできません」。
一流剣士への道は険しいが、一度味わった壮快感は病みつきに。
◇上級者は「求道コース」
「日本殺陣道協会」の講座は、
▽基本動作を学ぶ「通道コース」(10回2万円)
▽上級者向けの「求道コース」(10回2万5000円)
▽小学生以下の「殺陣道キッズ」(10回1万円)
の3コース。
1回1000円で体験レッスンも可能。
京都市、神戸市、堺市などでも講座が開かれている。
上級者は、地方などでのイベントに出演できる。
9月、米ニューヨークのカーネギーホールでイベント出演。
問い合わせは、日本殺陣道協会(06・6533・0039)。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/21/104680/
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