2009年7月31日金曜日

東大の研究グループがメタボ症候群の発症メカニズムを解明

(日経ヘルス 7月27日)

メタボリック症候群の発症過程では、肥大化した内臓脂肪の周囲に
一種の“炎症状態”が起こることが知られてきている。
東京大学の研究チームが、この炎症状態を詳細に顕微鏡で観察、
炎症前の段階に、CD8陽性Tリンパ球が働いていること、
Tリンパ球を抑え込むと、内臓脂肪の“炎症状態”が生じない
ことがわかったと発表。

東京大学大学院医学系研究科の永井良三教授らのチームで、
7月26日付の米科学誌ネイチャー・メディスン(電子版)に掲載。

メタボの過程では、脂質の取りすぎなどにより、
内臓脂肪の細胞一つ一つが、最大で直径3倍くらいになるまで肥大。
肥大すると、そこから出されるたんぱく質のサイトカインが信号となって、
全身の血管内に血栓ができやすくなったり、炎症が起こりやすくなる。
肥大した脂肪細胞の周囲にも、マクロファージが集まって
炎症が起きていると考えられている。

東京大学のチームでは、「実際に何が起きているかを、特殊な顕微鏡
(レーザー共焦点顕微鏡)を使って詳しく観察した」
(同研究チームの真鍋一郎・特任准教授)。
肥大化した脂肪細胞の周囲では、マクロファージがたくさん集まって、
炎症が起きていることが画像でも確かめられた。
「脂肪細胞に周囲に集まっている物質を網羅的に解析したところ、
マクロファージが集まるかなり以前、CD8陽性Tリンパ球が
増えていることがわかった」

CD8陽性Tリンパ球の働きを抑える実験
(Tリンパ球の抗体を投与し、Tリンパ球の働きを8割ほど減らす実験、
CD8陽性Tリンパ球を全く作れないマウスを使った実験)をしたところ、
いずれの場合もマクロファージの増加が大幅に抑制され、
脂肪組織の炎症が抑えられた。
同時に、全身の糖代謝やインスリンの効きも良くなり、
糖尿病の病態が改善。

「CD8陽性Tリンパ球が、メタボリックシンドロームを引き起こす
脂肪組織の炎症に必須であることがわかった」

CD8陽性Tリンパ球は、通常、細菌やウイルスのような
異物が入ったとき、感染してしまった細胞を攻撃して殺すために
絶対に必要な細胞。
脂肪細胞の炎症を抑える目的であっても、
完全に働かなくするわけにはいかない。

「今回の研究を治療に生かす場合、CD8陽性Tリンパ球の
ある働きだけを抑えるような方法が考えられる」(真鍋准教授)。
「何をきっかけに、CD8陽性Tリンパ球が増えるのか、
今後はその物質を特定する必要がある」(永井教授)。
それができれば、メタボになっても糖尿病や動脈硬化の発症を
抑えるような薬を開発できる可能性がある。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090727/103644/

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