2009年7月29日水曜日

ラグビーW杯:「市場開拓」追い風に 26人中16票賛成

(毎日 7月28日)

国際ラグビー機構(IRB)の理事会で、19年大会のW杯開催地として
日本がアジアで初めて選ばれた。
11年大会招致では決選投票の末、ニュージーランドに敗れたが、
これまで南半球、北半球の伝統国で交互に開催されてきた
W杯の歴史に、新たな一歩を踏み出す。

IRB幹部らで構成するW杯の運営組織
「ラグビー・ワールドカップ・リミテッド(RWCL)」が、
15年にイングランド、19年に日本を推薦。
このセット案について、26人の理事が投票し、16票の賛成。

IRB創設メンバーの欧州、南半球の8カ国・地域が各2票を持ち、
日本の関係者は伝統国重視の保守的な風潮を懸念、
国際的な市場開拓を求める動きが、日本への支持につながった。
IRBにとって、アジアでの開催で競技の世界的普及をアピールでき、
7人制ラグビーの五輪競技入りにも好材料に。

◇「歴史的な日」…森会長

日本のW杯19年開催決定の報を受け、森喜朗会長は
「ラグビーを世界に広げたい、という日本の努力が賛同を得た。
世界のラグビーが新たな一歩を踏み出した歴史的な日」

ダブリンに赴いていた同協会の真下昇専務理事(招致委員長)が、
電話で森会長に報告。
森会長が「ご苦労様」とねぎらうと、
真下専務理事は「IRBにとっても夜明けでしょう」と興奮気味。

選手を代表して出席したトップリーグのキャプテン会議代表の
大畑大介(神戸製鋼)は、「一ラグビーファンとして素直にうれしい。
最高の瞬間です」と喜ぶ一方、
「ホスト国として日本代表がどれだけできるか」と引き締まった表情も。
和田文男・同協会副会長は、積極的な人材登用など
協会の体制強化を進める考えを示した。

◇日本の会場予定地◇

【国内】日産スタジアム、長居スタジアム、国立競技場、秩父宮ラグビー場、
ユアテックスタジアム仙台、レベルファイブスタジアム(福岡)、
豊田スタジアム、札幌ドーム、ホームズスタジアム神戸

【国外】香港スタジアム、シンガポール・スポーツ・ハブ(11年完成予定)
※メーン会場は日産スタジアムの見込み

◇解説…資金計画に難題

IRBの国際化路線を背景に、日本は悲願のW杯開催を勝ち取った。
欧州、南半球の伝統国だけで行われてきたW杯が、
初めてアジアで開催される意義は大きい。

だが、巨額の財政負担を強いられる現実は決して楽観できず、
日本ラグビー界は多大なリスクも背負うことに。

W杯の収益で、4年間の活動費をまかなうIRBは、
15年大会は8000万ポンド(約128億円)、
19年大会は9600万ポンド(約153億6000万円)の拠出を義務づけ。
IRBのラパセ会長は、企業の試算を基に、
「開催国の経済効果は21億ポンド(約3360億円)を超える」と説明、
ラグビー人気が低迷する日本において、現実味のある数字とは思えない。

世界同時不況を経験した企業側は、スポーツ界への投資に慎重。
03年度トップリーグ創設時から支援したマイクロソフト社でさえ、
昨季限りでリーグとの協賛契約を打ち切った。
11年ニュージーランド大会は、赤字見通しでスポンサー探しに
苦慮しているといわれ、国内外のラグビー界を取り巻く環境は明るくない。

日本協会は、
▽10年後に競技人口を20万人(現在は約12万人)に増やす
▽大会拠出金を支払っても、800万~830万ポンド(約13億2800万円)
の利益を生む--とアピール。

具体的な普及策や資金計画はまだ見えてこない。
開催まで10年。
W杯を財産とするためにも、足元を見つめた準備が求められる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/rugby/news/20090729k0000m050140000c.html

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