(日経 2009-09-04)
民主党の鳩山由紀夫代表は、米スタンフォード大学で
工学博士号を取得、菅直人代表代行は東京工業大学卒。
政権中枢で、理科系出身者が活躍する日本では
珍しい時代を迎える。
科学技術分野で打ち出す民主党の政策内容は
まだはっきりしないが、この分野の強化・振興を怠れば、
日本の未来は危うい。
新政権には、研究開発の現場を元気にする施策を期待。
鳩山代表は、東京大学工学部を卒業後、
スタンフォード大で経営工学を専攻。
帰国し、東工大助手と専修大学助教授を務めた。
菅代表代行は、東工大理学部応用物理学科を卒業、弁理士。
科学技術について理解のある政治家といえ、
日本のこの分野の状況も把握。
2人の意向がどれだけ反映されるのかは不透明だし、
民主党を中心とする新政権が考える科学技術政策については、
流動的な要素が多い。
科学技術の振興を否定的にとらえることはなさそうだが、
その進め方が大きな焦点になることは間違いない。
中長期的には、関係府省が設置している審議会と
傘下の独立行政法人によって確立、
政策立案と実務推進の体制が大きく変わることが予想。
独法のあり方は、大きな議論を呼ぶ。
政官が一体になって認めた産業界の意向を反映した
大型プロジェクト予算や、各地域に新しい施設を建設する
箱物中心の事業などは、見直しを迫られる。
新政権の出方を警戒した動きも既に出ている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトと
連動して、九州大学内に設置した水素ステーションの開所式を、
開催する予定だったが、急きょ延期。
政権交代が決まった直後、にぎやかなイベントは自粛した方がよい
という判断が働いたもよう。
2011年度から始まる第4期科学技術基本計画の策定作業にも
影響が出るだろう。
現在まさに官僚が中心になり、第3期の中間評価と次期計画に
盛り込む内容の検討が本格化。
この作業に政党がどこまでかかわってくるのか、
今後の民主党の政策運営を見極めるよい事例に。
当面の注目課題では、緊急経済対策の一環として
補正予算に組み込まれた研究開発支援策が俎上に載る可能性。
特に、2700億円基金で世界トップ級の研究者を厚く助成する
「最先端研究開発プログラム」や、
695億円で各都道府県に産学官連携拠点を整備する事業は、
凍結あるいは仕切り直しといった事態を迎えるかも。
短時間で応募資料を作り、審査委員に説明した研究者には
気の毒だが、歴史的な衆院選のあおりと冷静に受け止め、
次の助成事業に生かしてもらいたい。
もう1つ注目したい項目に、民主党政権が日本の研究システムに
どこまで手を加えるか。
最近の科学技術政策は、行政が望ましい分野を掲げる
トップダウン型の傾向が強い。
意に背いた研究者には、研究費を出さなくした事例も、
たんぱく質の構造解析事業などで見られた。
研究者個人の発意を尊重した研究体制を敷けるかどうかは、
新しい科学技術を開拓していくうえでも重要。
それを推進するために、必要な資金の量と分配方法、
支援先の選抜とその成果の評価方法や手順、
薄いとされるトップ研究人材の育成など、
長く改善が必要とされてきた課題は多い。
世界が科学技術の強化を競う時代に突入し、
日本の勢いをそぐ施策を打ち出すようなことになれば、
取り返しのつかない傷を残しかねない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090903.html
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