(朝日 2009年9月1日)
糖尿病の発病に、脂肪組織の老化が関係していることを、
千葉大などのグループがマウスの実験で確かめた。
脂肪組織の老化を抑えることが、
糖尿病の新たな治療法開発につながることを示した成果、
米医学誌ネイチャーメディシン電子版に掲載。
千葉大医学部循環器内科(小室一成教授)の南野徹助教らは、
遺伝子操作で老化しやすくしたマウスを研究している中で、
このマウスに糖尿病が目立つことに気づいた。
このマウスに高脂肪のエサを与えると、通常のマウスに比べ、
インスリンが効きにくくなって血糖値が上昇することが判明。
脂肪組織を調べると、細胞の老化を示す酵素が増え、
脂肪組織の老化が進んでいた。
老化した脂肪組織を摘出すると、このマウスは
インスリンが効きやすくなった。
正常なマウスにこの脂肪組織を移植すると、
インスリンが効きにくくなり、老化した脂肪組織が
糖尿病の引き金になっていることがわかった。
マウスの老化した脂肪組織では、炎症を引き起こす分子量が増え、
p53という遺伝子の活性が高まっていた。
活性化すると、細胞の老化につながることで知られている。
糖尿病になりやすく改変されたマウスでも、同様の変化が認められ、
遺伝子操作でこのマウスの脂肪組織のp53を働かなくさせて
老化を阻害したところ、インスリンの効きが改善。
p53を過剰に働かせると、インスリンの効きが悪くなった。
p53の活性化による脂肪組織の老化が、
糖尿病を引き起こしていることが明らか。
糖尿病の患者の内臓脂肪でも、老化を示す酵素の増加など
同様の現象が認められ、小室教授は、
「人の糖尿病でも、脂肪組織の老化との関係が考えられる。
糖尿病を、脂肪組織の老化を抑えるという観点で研究を進めれば、
新たな治療薬の開発につながるかもしれない」
http://www.asahi.com/science/update/0901/TKY200909010148.html
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