(日経 2009-04-10)
「緑の革命」は再び到来するのだろうか?
最近流行のグリーンニューディールのことではない。
小麦や大豆など穀物の大増産のこと。
第2次世界大戦後に米農務省やロックフェラー財団などが推進、
品種改良とかんがい技術などで穀物の生産性を大きく向上。
種子ビジネスを展開する米モンサントが、「第2の緑の革命」
モンサントのケビン・エブレン副社長が、
「持続可能な収量増加構想(SYI)」と呼ぶ計画を宣伝。
2030年までに、トウモロコシと大豆、綿の収量を2倍(2000年比)に。
水や化学肥料などの投入量を3分の1に、農家の採算性を向上させる。
途上国の人口増加と食生活の向上(畜産品の消費増大)で、
世界の穀物需要は増え続ける。
モンサントはSYIを、「新しいビジネス構想」であり、
世界のニーズにこたえる社会貢献活動でもある。
農業用水の量を減らせる耐乾燥性トウモロコシを、
2012年に米国内で販売を開始、アフリカ向けも開発し17年にも投入。
耐乾燥性の遺伝子は無償供与。
米西部のテキサス州などの乾燥地では、地下の帯水層から水をくみ上げて
農業用水としているが、過剰くみ上げによる帯水層の枯渇が心配。
こうした地域で、耐乾燥性品種は活用可能だし、
アフリカ・サハラ砂漠以南でかんがい用水のない地域でも役に立つ。
かつての緑の革命は、品種改良により多収量種を育て、
かんがい用水と化学肥料、農薬の投入によって
単位面積当たりの生産量を大きく伸ばした。
物質やエネルギーの多投入型の農業。
モンサントの提唱するSYIは、資源節約型で、
遺伝子組み換えという知識集約により新しい革命を目指している。
組み換え作物への賛否はともかく、
そうした動きに巨大企業が乗り出そうとしている。
これとは、まったく違う新たな革命もある。
SRI(システム・オブ・ライス・インテンシフィケーション)と呼ぶコメの増産法。
マダガスカルで開発され、途上国農業を支援する学者や非政府組織(NGO)の
働きもあって、インド、インドネシア、中国などで普及。
特徴は、芽が出て間もない乳苗を1本ずつ間隔をあけて植え、
生育の途中で田から水を抜く「間断かんがい」を行う。
インドネシアで、円借款による小規模かんがい事業を指導する
日本工営の佐藤周一さんによると、「SRI導入で収量が増え、
農薬などの使用は減るので、農家の収入増になっている」
品種は、在来種のまま。
間断かんがいで水使用は減らせるが、草取りの手間は増す。
資源を低投入にする代わりに、「労働投入を増やして増産を果たす手法」と
SRIに詳しい農業・食品産業技術総合研究機構の堀江武理事長。
途上国の実情に適した農法であるかもしれない。
1年前、世間の話題は食糧難だった。
豪州のかんばつなどで、穀物生産が頭打ちになったところへ、
バイオ燃料ブームに乗って、トウモロコシなどが燃料にまわされ、
穀物価格が上昇。輸出制限をする農業国も。
バイオ燃料ブームはやや下火になったが、食糧需給の背景にある
人口増と畜産品への需要増加というトレンドは今も変わらない。
世界の栄養を支えるには、穀物増産が今後も避けられない。
その実現には、モンサント流かSRI流かという二者択一の話ではない。
どちらも必要で、資源・エネルギーの低投入の農業でなければならない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090409.html
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