(日経 2009-06-01)
低炭素社会を目指すうえで、意外と効果を軽く見ることができないのが
オフィス環境の改革。
節電は、電力会社のCO2排出抑制に直結。
テレビ会議の導入など、IT活用で社員の出張を減らせれば、
自動車や交通機関によるCO2排出の削減にも。
環境負荷低減の効果も狙って、NECが2004年、東京・港に開設した
先端的オフィスが「NECブロードバンドソリューションセンター」。
業務効率化のための情報システムを展示するショールームを設け、
オフィスでは社員が、最新のITを使った新しい働き方を実践。
「環境にやさしいオフィス」をつくるうえでの勘所を探ろうと、
同センターを訪ねた。
NECが同センターを設けた際、オフィス環境面で
思い切って変えた点は大きく3つある。
1つは、社員の席を固定せず、毎朝出社すると、
自由に自分の席を決める「フリーアドレス」制。
事業部長クラスやその秘書など一部を除き、
営業、SE(システムエンジニア)など大半の社員はフリーアドレス制とした。
2番目は、ペーパーレス化。
センター開設時に文書の収納スペースを大胆に減らし、
自然と社員が紙の資料を大量に持たなくなるようにした。
できるだけ文書類は、社員が自分の端末画面で確認できるようにし、
会議資料などの複写を抑制。
社内用のソフトウエアがたびたび更新され、従来はその使い方を
端末から印刷、多量の紙を抱える社員もいたが、
そうした自分用のマニュアル類も減らせた。
3つ目は、テレビ会議やインターネットによるウェブ会議の活用推進。
出張、外出など社員の移動を抑制。
それぞれの改革は意外と効果が出ている。
フリーアドレス制は、例えば営業、SEについては
人数分の席を用意する必要がなくなり、空調や照明など
単位面積あたりの電力消費を削減。
CO2排出に換算すると、最大40%の削減できたと試算。
ペーパーレス化は、紙生産に必要な電力や燃料をつくりだす際に
排出するCO2の抑制に。
センター開設後、端末側のハードディスクに格納していたデータを
サーバー側に保管する「シンクライアント」システムを導入、
IT機器の電力消費も抑えられる。
ペーパーレス化関連のCO2削減幅は、旧オフィス時代に比べ最大62%。
テレビ会議、ウェブ会議は、東京側、大阪側から3人が参加する会議を
月20回開くとすると、大阪側の3人が東京に来るための
航空機や新幹線利用が不要になり、削減できるCO2排出量は年間15トン。
旧オフィス時代と比べたCO2削減幅は最大50%、
2008年度は07年度比で25%削減できた。
「環境にやさしいオフィス」づくりは、円滑に進んだようにも見えるが、
新たな発見や実際にやってみて気づいた点もいくつかあった。
「一番難しかったのはペーパーレスの推進」と下垣直子センター長。
必要な情報は端末画面で確認できるからと、資料や文書の「一掃」を
社員に強く呼びかけると、かえって抵抗感を生み反発にあう。
紙の資料を「ゼロ」にできるかというと、それはおそらく不可能。
社員に強いプレッシャーを与えずとも、紙の量は「5割くらいは減る」
「ペーパー『レス』であって、ペーパー『ゼロ』ではない」ということを、
推進者はしっかり押さえるべきだというわけだ。
「ペーパーレスとフリーアドレスは、密接につながっている」
フリーアドレスといっても、次第に自分がすわる席が決まってきて、
「これは自分の席」という認識が社員に生まれないとも限らない。
その瞬間から、その席に紙の資料を積み始めたくなるかもしれない。
NECのセンターでは、社員が資料を入れておくための小型ロッカーを用意、
机の上には個人の所有物を置かないことを厳格ルールとした。
それぞれのチームのリーダーが気持ちを切り替え、
「固定席への郷愁」を捨て去ることも重要。
結局、オフィス環境改革は1人ひとりの自覚次第。
意識の切り替えが進むかどうかが問われそう。
情報システム環境の再設計や机や座席の配置見直しなどは
入り口にすぎない。
安易な気持ちで「低炭素オフィス」を目指しても実りは少ない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090528.html
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