2009年6月11日木曜日

ヤフーが原点回帰を急ぐ理由

(日経 2009-06-04)

国内ネット企業が、技術重視の姿勢を強めている。
ポータルのヤフーとエキサイトが、相次いで技術陣を統合する
組織改革を実行。
新サービスや新機能の開発力を強化する体制を敷いた。

SNS最大手のミクシィも、自社サイトの技術仕様(API)公開によって、
他社が自由に使えるプラットフォーム型のサイトへの脱皮をめざし始めた。
「ネット企業=IT企業」という原点に回帰する動きが広がりそう。

ヤフーは4月、近年で最大規模の組織改革を実行。
井上雅博社長の直轄組織として、「R&D統括本部」を新設、
従来各事業部に分散していた技術開発機能を集約。
この改革を、「ヤフーはIT企業であるという宣言」と解説。
メディア企業からIT企業への原点回帰といえる。

技術をどう生かすのか?
同社は昨年から、ショッピングや検索、オークションなどの
各種サービスや、IDや課金といったプラットフォーム技術のAPIを
他社にも開放する「オープン化」戦略を推進。
APIの利用企業を増やすために大事なのが、
使い勝手や機能、処理能力を左右する技術力。

APIの利用企業とは、利用によって得られた収入を分け合うのが基本路線。
ネット普及以来ポータル企業が続けてきた、コンテンツを仕入れて
自社サイトに掲載し、広告を張って稼ぐという
「電子雑誌」的なモデルとは明らかに違う。

背景には、国内ネット業界でガリバー的存在のヤフーといえども、
自社サイト内の広告収入だけでは、高成長・高収益は維持できない
との危機感がある。

ポータル中堅のエキサイトも、4月に社員全員が辞令をもらうほどの
抜本的な組織改革を実施、「技術志向の体制」(野田俊介社長)を整備。
具体的には、本業の「ポータルサービス本部」のトップを技術者とした。
同社技術開発とサービス開発の機能を統括する
テクノロジー&サービス本部を新設。
本部長を、全社の技術陣を統括するCTO(最高技術責任者)とし、
その下に全社のサービス企画を統合するCSO(最高戦略責任者)を置いた。
同本部の中に社内大多数の技術者を集めた。

同社は、各種サービスの担当グループに技術者が散在し、
サイト開発を進めていた。
社内のいたるところに類似の開発プロジェクトが併存し、重複コストがかさむ。
新体制では全社に散在する技術面、サービス面のアイデアを
吸収・集約でき、効率的に新サービスや新機能を開発できる。
具現化できれば、業績低迷脱出の突破口となるかもしれない。

ミクシィは、ミクシィの中で動くゲームなどのアプリケーションソフトを
外部の企業や個人が開発しやすいよう、4月からAPIの社外提供を始めた。
今後も開放するAPIは順次増やす計画。

恐らく3社が共通して意識しているのが、
技術基盤を社外の個人や企業に提供して収入に結びつけてきた
米グーグルや米アマゾン・ドット・コムなど、「Web2.0」企業群。

グーグルがネット界の王座についたのは、
一にも二にも検索エンジンの性能、膨大なデータを処理できる
巨大並列サーバーの構築・運用技術といった技術力のたまもの。
アマゾンも、消費者や提携店舗が使いやすいソフトウエアが競争力の核。

ネットの世界では、新サイト立ち上げにしても、新しいビジネスモデルの
構築にしても、必ずサイト・機能の開発が伴う。
ネット広告市場の急成長に頼ってきた国内ネット企業が、
広告不況がネットにまで広がった今、
ようやく自らの肝心な部分を再認識しつつある。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt090603.html

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