2009年6月11日木曜日

職員の力(4)チーム医療寮も教室

(読売 5月30日)

チーム医療の基本を学ぶため、寮生活が活用されている。

「お帰りなさーい。リフレッシュした?」
5月の連休が終わり、寮に次々と戻ってくる学生たちに、
寮監の大川照子さん(56)が声をかける。

「コミュニケーションがうまくできないと、医療人としては失格と
言われますが、その点、寮での共同生活は意味があります」
大川さんは、大学病院の元看護師。

山梨県の富士山のふもとに広がる、昭和大学富士吉田キャンパス
医、歯、薬、保健医療の4学部がそろう医系総合大学で、
全学部の1年生約600人のほぼ全員が寮で共同生活。

同大がユニークなのは、チーム医療の学習に、
全寮制の特色を利用していること。

チーム医療とは、病院で、医師、看護師、薬剤師など異なる医療の
専門職が、協力して患者の治療に当たること。
医療の高度化複雑化、患者の権利を尊重する機運の高まりなどを背景に、
ますます重要性を増している。

同大では、チーム医療を担う職種の卵が共同生活を送る寮に注目。
1室4人の部屋を、異なる学部生が同室になるようにした。
寝起きを共にすることで、お互いの理解を深めてもらおう。

医学部1年の黒田凌さん(18)は、
「高校も寮生活でした。すぐ仲良くなれる。勉強も教えあえる。
互いを知り合うのに都合がいい」
黒田さんの友人で、別室の歯学部1年早川大地さん(18)も、
「部屋が違っても、意思疎通が図りやすい」

一昨年、課題についてどう対処したらいいかをチームで学ぶ
「問題解決型学習」を始めた。
「おばあちゃん、施設はいやだ、家が一番いいっていつも言っているよ」、
「年寄りの世話は大変だ、と母さんは言うし」、
「僕のおじいさんは、この前やっとホームに入れたんだ」

学生がシナリオに沿って話を進めると、聞き役の先生が、
「施設がいやだと思われる理由は?」、
「年寄りの世話はなぜ大変?」、
「どうして入所が『やっと』なの?」などと突っ込んだ質問。

問題点を整理し、持ち帰って不明な点を調べ、
みんなで解決策を話し合う。
異なる学部生を8人程度集めた男女混合のチームは、
同室者でないように編成されるが、全員が寮生なので、
集会室などにすぐに集まることができる。
初めの一歩の学習はこんな調子で、
3年生から本格的なチーム医療の学習に発展。

「チーム医療につなげるには、生活を支える教職員の
チームワークも不可欠」と、
富士吉田教育部長の片桐敬名誉教授。
各寮の寮監らも、付属病院の看護師だった人など、
医療に精通したスタッフを集めた。
生活だけでなく勉強の面でも、学生の相談相手になっている。

「勉強も見て、親代わりを務めるのがポイント」
教職員が口をそろえる。

◆問題解決型学習

少人数で解決策を追究させる学習法。
教員の助言の下、解決のための仮説をいくつか立て、
仮説を実証するための情報収集と学習を進め、
最も優れた対策を討論で導く。
単なる知識の習得ではなく、実際的な効果が認められ、
多くの医系大学で導入。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090530-OYT8T00198.htm

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