2009年6月11日木曜日

五十肩:謎の痛み 原因も不明 骨など異常なし

(2009年6月5日 毎日新聞社)

スーツを着ようとすると、右肩が痛くて上がらない。
寝るとき、右半身を下にすると痛む。
大田区の男性会社員(43)は、昨年秋からこんな症状に悩まされた。
痛みは次第に増し、近くの病院で診察を受けた。
レントゲン撮影では、骨折は発見されなかった。
炎症や上腕骨と肩甲骨をつなぐ腱板の断裂もなかった。

医師から、「これといった異常はない。典型的な五十肩ですね」、
痛み止め薬と湿布を処方された。
「痛みがやわらいだら、意識的に肩を動かしてください。
今回のように、半年も放置しないように」と注意。
男性は、「異常がないのに強い痛みを伴う。不思議だ」

このような症状は、「四十肩」「五十肩」と呼ばれる。
江戸時代中期の辞書には、「五十腕」という項目があり、
「五十腕とも五十肩ともいう。また長命病という」と説明。

当時は、平均寿命が50歳以下で、
「肩が痛くなったら長生きの証拠」と考えられていた。
医療現場では、「五十肩」と呼ばれることが多く、
「明らかな起因を証明しにくい初老期の疼痛性肩関節制動症」と定義。

海外では、「フローズン・ショルダー(凍結肩)」
「痛みが強く動きにくくなる時期」があり、
続いて「動きが制限される時期」、「動きが回復する時期」と推移。

江戸時代から人々を悩ませてきた痛みだが、
実態は今もよく分かっていない。
「40-50歳の人に多い肩関節の動きが制限される痛み」で、
なぜ起きるのか、原因となる生活習慣があるのか、
男女で違いはあるのか、なぜ回復するのかなど、未解明部分が多い。

肩関節のトラブルに詳しい高岸憲二・群馬大教授(整形外科)は、
「五十肩の患者を検査しても、これといった異常が見つからない。
肩関節を包む袋(関節包)が厚く、硬くなっており、
結果として肩が動きにくくなったり、痛みが生じるようだ

糖尿病や高脂血症の人に五十肩が多く、治りにくいといわれる。
これらの病気の患者は、末梢血管に障害が出やすいことが
関連している可能性がある。

五十肩の症状が出たら、どう対処すればよいのか?
高岸教授は、「痛みがひどいときは安静に、痛みが少しやわらいだら、
肩を動かせる範囲で動かした方が回復は早い」

ひどい痛みのときは、なるべく肩を動かさないようにし、
三角巾を使うことも勧められる。
重い荷物は厳禁だ。
患部を温めると、痛みがやわらぐ。
我慢ができない痛みが続く場合は、ステロイドやヒアルロン酸、
大量の生理食塩水を注射する治療法も。

肩が少し動かせるようになったら、
痛みが出ない範囲で動かすことを心がける。
イラストのような運動も効果がある。
夜の痛みは、日中の活動が過剰な場合に出やすいので、
運動量などの目安にするとよい。

放っておいても、多くの人が1-2年で治る。
高岸教授が164人の患者を対象に実施した調査では、
1年以上たっても運動や作業をする際、痛みが残っている患者が3割。
「五十肩と思っても、腱板断裂など別の障害が起きている可能性がある。
自分で判断せず、整形外科の診察を受けてほしい」
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◆こんな時に痛むと五十肩が疑われる
・シャツや上着を着る
・髪をとかしたり結う
・帯を結ぶ
・腕を真上に上げる
・腕を頭の後ろに回す
・腕を背中に回す

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/5/101350/

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