(日経 6月3日)
上司から早く帰れとせき立てられるが、
やらなければいけないことは山積み状態——。
業績悪化で、残業代削減に取り組む企業が増え、
こうした悩みを持つビジネスパーソンは多い。
「部下を定時に帰す『仕事術』」を著した、
東レ経営研究所(浦安市)の佐々木常夫社長の話をもとに、
残業ゼロの秘訣を探ってみた。
「逆説的だが、まずは定時に帰ると決めること」
佐々木さんが、最初にあげた秘訣がこれ。
無理やりでも、定時に仕事を切り上げてしまう。
そうすると、「その時間までに仕事を終えるにはどうすればよいのかを
考えるようになる」
このやり方の目的は、無駄のあぶり出し。
佐々木さんが部下の仕事ぶりを見たところ、
だらだらと机に向かっている人が多かった。
定時に終わらせるには、「何を優先的に処理すべきかを
真剣に考えるようになる」
この考える作業が、効率化への最大のポイント。
重要なのが、「思い込みやあいまいさを排除すること」
上司から、取引先の経営状況を調べるように指示されたとしよう。
上司は、売上高や利益の水準を知りたかっただけなのに、
部下は勝手に思いこんで、株主構成や従業員の規模まで
調べてしまう場合がある。
結果的に無駄な仕事に追われ、夜遅くまで会社に居残るということに。
上司は、なぜこの仕事を頼んだのかを考えて確認しておけば、
無駄な残業はなくなる。
途中経過を報告しておけば、上司の要求とのすれ違いの危険性も減る。
定時に帰ると決めた後、「自分へのアポイント」を設定。
月曜日の午後1~2時は、取引先の経営分析にあてる。
この時間帯は、社外からの電話や上司からの問い合わせに
邪魔されないよう、会議室にこもったり、喫茶店で仕事をしたりする。
日中にアポイントを設定するのが難しければ、
早く帰って自宅で仕事をしたり、早朝に出勤して夕方前に
退社したりするといった方法も。
秘訣の3つ目は、「こま切れ」時間の活用。
佐々木さんのカバンには4種類のファイルがあり、
それぞれ部下の報告書や寄稿文、講演会での原稿などが入っている。
会社の行き帰りの電車の中でファイルを取り出し、
文書を読み込んだり、手を加えたりしている。
こま切れの時間をひねり出す工夫も怠っていない。
取引先と連絡を取る際、午前9時または9時半を狙って電話。
相手が会議や打ち合わせで席を外す前に電話すれば、
その後に時間の余裕が生まれる。
昼食も、正午前に店に着くように心がけている。
列に並ぶ時間を省ける。
残業ゼロを目指すには、仕事にすぐに取りかかってはいけない。
「急がば回れ」を心がけて、段取りを意識することが
ムリやムラをなくすのだ。
「仕事の期限を守れるようになり、残業も減った」
IT関連企業に勤める金谷年泰さん(31)は、段取りの効果をこう語る。
金谷さんは、企業のホームページを作成。
発注から納期まで約1カ月。
この間に企画を立てて、業務をチーム内で分担し、
実際に作成するという手順。
以前は、どの仕事にどれくらい時間がかかるのかを
あまり考えず、業務を割り振っていた。
あるメンバーに、極端に負担がかかるなどして、
納期を守れなかったこともあった。
金谷さんは、書籍などを通じて段取り術を学んだ。
今では、業務の内容や難易度を十分に調べてから分担を考えている。
予備日を置くなど、余裕を持たせた計画を立てるようになった。
◆「残業ゼロ!仕事が3倍速くなるダンドリ仕事術」を著した
ハイブリッドコンサルティングの吉山勇樹・最高経営責任者(CEO)の話
「段取りで必要なのは、仕事の全体像を把握したうえで細分化し、
それぞれのゴールを明確に設定すること。
算数に例えれば、最初に『10』という答えを出す。
その答えを導き出すには、何と何を足さなければならないのかを考える、
という発想が必要」
「失敗しても、修正を繰り返せば、段取りの技術は完成度が高くなる。
企業経営でPDCA(プラン・ドゥー・チェック・アクション)といわれるように、
段取りではGPDCA(ゴール・プラン・ドゥー・チェック・アクション)を
意識してほしい」
「段取り力を高めるには、発想力が必要。
ゴールにたどり着くためにしなければならないことを
メモする習慣をつけてみるとよい」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090603.html
0 件のコメント:
コメントを投稿