2009年6月13日土曜日

職員の力(6)部活顧問 生活も指導

(読売 6月3日)

クラブ活動を通じ、職員が学習、生活の両面を指導する。

授業を終えた名古屋商科大学のテニス部員たちが
三々五々、コートに集まってくる。

「なんだ、その髪形は。変だぞ」。
大学職員で、テニス部副部長を務める
石本潤・学生担当チームリーダー(45)の遠慮ない言葉が飛ぶ。
学生も、「すみません、後で直します」と応じる。
クラブとはいえ、身だしなみにも配慮。

同大の男性職員の半数以上は卒業生。
石本さんは、学生時代、同大テニス部主将。
男性職員全員、いずれかのクラブに部長、副部長として張り付き、
学生の相談相手になる。

テニス部では、教科で「F(不合格)」をとると、テニス部長で
学生支援部門長の杉浦学さん(54)から、その数だけ「げんこつ」。

経営情報学部3年の岩田葵衣さん(20)は、
「聞いてはいましたが、さほど手加減されないのでびっくりでした。
『しっかりやらなきゃ』と思うきっかけに。
1年前期での1回が目を覚ましてくれました」と笑う。

同学部3年の松井雄樹さん(20)は、
「職員の人たちは親のような兄のような存在。
一人暮らしなので、心配なことがありましたが、
バイト探しなど親身に相談に乗ってくれます」
厳しい体育会というより、面倒見のいい大人たちが
身近で見守ってくれているという印象。

名商大は、こうした課外活動の効用に着目し、
15年前からクラブ活動を単位として認定。
活動実績があるクラブの部員が対象で、卒業基準124単位のうち
半期2単位、4年間で16単位を算入。

杉浦さんは、「職員が身近にいて学生を指導しつつ、交流するのが
名商大の伝統。私たちは単なる事務屋とは違います

こうした伝統は、卒業生を通じて他大学にも広がっている。
卒業生で、大同学園経理室主任の大脇崇浩さん(39)は、
大同大学(名古屋市)で剣道、スキー、バイクと三つの部の顧問、
学生たちと楽しく過ごしている。

社会人としての礼儀、ふるまいを教えるのは職員の方がいい。
社会人基礎力の育成になる。
学生も大人とふれ合う機会が少ないから、学生に対するサービス」

大脇さんには苦い思い出がある。
就職活動をしていた時、ある大学の面接で、
「大学では剣道に打ち込んだので、ぜひ剣道部の顧問もやらせて下さい」
と熱意を示したが、「そんなことより仕事をきちんとやればいい」と。

学生が大学でつきあう大人は、教員ばかりになりがち。
ふつうの大学なら、「職員がでしゃばるな」、「学生と接するな」と
言われてしまうことも多い。

職員も、学生を支援する立場にあるのは変わらない。
気概を持つ職員が、どの大学にも求められている。

◆社会人基礎力

産業界から学校に対し、学生たちが主体性や課題発見力など、
実社会で必要な能力を就職前から育成しておくことが
近年求められている。
経済産業省は、従来の学力だけでは身に着かない「社会人基礎力」
これを定義し、大学の教育段階での取り組みを支援。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090603-OYT8T00259.htm

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