2009年6月7日日曜日

逆風の中で:第4部・冬季競技の模索/6 ジャンプ界の名門雪印

(毎日 5月24日)

雪印乳業史料館で、ノルディックスキー・ジャンプの
06年トリノ五輪代表、伊東大貴(23)、伊藤謙司郎(19)の入社会見。
2人は昨年末、所属していた土屋ホーム(札幌市)の
業績悪化による支援縮小を受け、同社を退社。
不況でスポンサー探しが難航、「就職活動」を続けながら
シーズンを過ごした。
一転して、1946年創部の名門チーム入りとなった伊東は、
「今季は不安で競技に集中できなかった。
精神的な強さを身につけたい」

五輪代表選手でも、所属先が決まらないほど経済状況は悪く、
雪印も余裕があったわけではない。
3月期のグループ決算は増収増益だったが、
これは値上げや大幅なコストダウンが要因。
今後も、厳しい経営環境が続く。

2人を採用した背景には、「有力選手の補強によるチーム強化」
だけでなく、「ジャンプ界を支えている」という使命感。

雪印スキー部副部長の武田泰夫総務部長は、
「スキー部の活動は、社会貢献の一環。
費用対効果は算出したことがない」
1925年、北海道製酪販売組合として誕生した雪印は、
冬季競技の発展と普及を目指してきた。
ジャンプを通じて、青少年育成や社会貢献に力を入れてきた歴史。

ジャンプ台を寄贈し、今はスキー部員らによる年2回の
ジャンプ少年団指導などに取り組んでいる。
58年から、協賛の「雪印杯全日本ジャンプ大会」がスタート。
中学生や高校生の部がある数少ない大会で、
ジャンパーの登竜門として知られる。

雪印は、00年に約1万5000人の発症者を出した
食中毒事件を起こし、会社が大きく傾いた。
アイスホッケー部や陸上部は廃部になったが、スキー部は存続。
02年、子会社の牛肉偽装事件が発覚した直後、
スキー部の複合部門が廃止、ジャンプに特化した部自体は残った。

高野瀬忠明社長は、「スキー部は継続していく」と断言。
72年札幌五輪銅メダルの故青地清二さんをはじめ、
98年長野五輪団体金メダルメンバーの原田雅彦さん(現コーチ)、
斎藤浩哉さん(現監督)、38歳で現役の岡部孝信らを輩出。
「会社がある限り持ち続ける」(武田総務部長)という
「スノーブランド」チームは、日本ジャンプ界に欠かせない存在。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/05/24/20090524ddm035050083000c.html

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