(日経 6月2日)
新年度になって2カ月。
今の職場に適応できず、悩んでいるビジネスパーソンも少なくない。
上司は、どうすれば部下の心の病の予兆を見逃さずにすむか?
メンタルヘルスサービスのピースマインド社長で、
産業カウンセラーの資格を持つ荻原国啓さんに、
主な想定されるケースごとに対処法を聞いた。
◆ケース(1)
誰よりも早く出勤し、元気良くあいさつしていたAさん。
徐々に出勤時間が遅くなり、表情も暗くなってきた。
この場合は、何が原因なのかを把握することが大切。
会議室など30分から1時間、Aさんの話をじっくり聞くことが必要。
「飲みにいこう」と誘ってはいけない。
飲み会では、仕事の話題から脱線しがち。
悩みの聞き出し方も重要。
Aさんの価値観に同調しながら、話を聞くのが基本。
目をみながら、うなずくだけでも効果はある。
上司の存在がストレス、という可能性も。
その場合、上司が直接、問題解決に乗りださない方がよい。
同期入社の社員や年齢の近い先輩社員などを通じて、
事情を聞くのが得策。
その上で何ができるかを考える。
◆ケース(2)
今まで寡黙だったBさん。
「給料が安い」、「通勤に時間がかかる」と不平不満を言うようになった。
その内容が徐々に激しくなってきた。
この場合、もともと不満を言うタイプなのかそうでないのかを
見極める必要がある。
文句を言いながら、それをテコに仕事をバリバリこなす人も多い。
トーンがあがっていくようだと要注意。
心の病が発症する危険信号の可能性。
ある日、不満が抑えきれなくなり、突然、会社を休んでしまう人も。
Bさんの話に耳を傾ける必要があるが、
どこまでもその不満につきあってしまうのはよくない。
たとえ気に入らない点があっても、会社は成果を出さなければならない
場所であることを伝えなければならない。
周囲の人も、Bさんの職場での役割や個性を認めてあげるのがよい。
◆ケース(3)
春に異動で、今の職場に加わったCさん。
会議で奇をてらった意見を出したり、質問したりするようになった。
こうした事例は若手社員、異動や入社したばかりの人に多い。
「結果を出さなければならない」という強迫観念に迫られている危険性。
意欲が空回りして焦りになり、悪くすると心の病に。
この場合、Cさんに今取り組んでいる仕事の内容を報告させてみては。
上司に認められていると思わせることで、
焦燥感を軽減できる可能性がある。
「地道に業務を進めていけばよい」と伝える。
Cさんだけ面談するやり方は禁物。
あくまでも、職場の制度や仕組みとして話を聞くという姿勢を示すべき。
◆部下への歩み寄り必要
予兆の見極め方や対処法を知っても、
部下の様子がわからなければ意味がない。
神戸製鋼所の人事労政部の北村彰浩・安全健康グループ長は、
毎週月曜日の朝、部下5人を集めて30分程度のミーティングを開く。
「とても楽しそうだね。今度はどこに行くのかな」
話題は仕事だけでなく、プライベートにも及ぶ。
北村さんは、5人全員が発言するように仕向けている。
言葉や表情から、何に悩んでいるのかを探るのが狙い。
「問題が小さいうちに気づけば、先輩として助言できる」
信頼関係が構築できれば、若手社員から話しかけてくる例も。
北村さんの上司の小山雄司課長も、
「こんなことを悩んでいたんだという発見もある」とミーティングの効用を説く。
JTBの人事企画部マネージャーの田村敦さんも、
意識的に部下とコミュニケーションを取るようにしている。
簡単な書類でも印刷して手渡すなどして、
言葉を交わす機会を多くしている。
部下の話を謙虚に聞くようにも心がけている。
「我々の価値観を押し付けても、意味がない」
自分1人で抱え込んで、悩みを深めてしまう若手社員もいる。
田村さんや北村さんのように、上司から歩み寄る姿勢が欠かせない。
◆リンクアンドモチベーションの水谷健彦取締役の話
社員が心の病になってしまうと、その組織は大きな戦力ダウンに。
不景気で、各社とも現場の人員を最小限に切りつめている。
ストレスへの抵抗力を高めるとともに、
心の病にならないようにすることが大切。
心の病は、誰もがかかる可能性がある。
リーダーは、1日数分でも意識的に時間をつくって
部下とコミュニケーションを取り、少しずつでも
ストレスの種を発散させていくことが必要。
不運にも発症してしまった場合は、
医者の診断やカウンセリングをすすめることも上司の重要な役割。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090602.html
0 件のコメント:
コメントを投稿