2009年6月12日金曜日

心の病、予兆逃さない 「上司の心得」専門家に聞く

(日経 6月2日)

新年度になって2カ月。
今の職場に適応できず、悩んでいるビジネスパーソンも少なくない。
上司は、どうすれば部下の心の病の予兆を見逃さずにすむか?
メンタルヘルスサービスのピースマインド社長で、
産業カウンセラーの資格を持つ荻原国啓さんに、
主な想定されるケースごとに対処法を聞いた。

◆ケース(1)

誰よりも早く出勤し、元気良くあいさつしていたAさん。
徐々に出勤時間が遅くなり、表情も暗くなってきた。

この場合は、何が原因なのかを把握することが大切。
会議室など30分から1時間、Aさんの話をじっくり聞くことが必要。
「飲みにいこう」と誘ってはいけない。
飲み会では、仕事の話題から脱線しがち。

悩みの聞き出し方も重要。
Aさんの価値観に同調しながら、話を聞くのが基本。
目をみながら、うなずくだけでも効果はある。
上司の存在がストレス、という可能性も。
その場合、上司が直接、問題解決に乗りださない方がよい。
同期入社の社員や年齢の近い先輩社員などを通じて、
事情を聞くのが得策。
その上で何ができるかを考える。

◆ケース(2)

今まで寡黙だったBさん。
「給料が安い」、「通勤に時間がかかる」と不平不満を言うようになった。
その内容が徐々に激しくなってきた。

この場合、もともと不満を言うタイプなのかそうでないのかを
見極める必要がある。
文句を言いながら、それをテコに仕事をバリバリこなす人も多い。

トーンがあがっていくようだと要注意。
心の病が発症する危険信号の可能性。
ある日、不満が抑えきれなくなり、突然、会社を休んでしまう人も。
Bさんの話に耳を傾ける必要があるが、
どこまでもその不満につきあってしまうのはよくない。

たとえ気に入らない点があっても、会社は成果を出さなければならない
場所であることを伝えなければならない。
周囲の人も、Bさんの職場での役割や個性を認めてあげるのがよい。

◆ケース(3)

春に異動で、今の職場に加わったCさん。
会議で奇をてらった意見を出したり、質問したりするようになった。

こうした事例は若手社員、異動や入社したばかりの人に多い。
「結果を出さなければならない」という強迫観念に迫られている危険性。
意欲が空回りして焦りになり、悪くすると心の病に。

この場合、Cさんに今取り組んでいる仕事の内容を報告させてみては。
上司に認められていると思わせることで、
焦燥感を軽減できる可能性がある。
「地道に業務を進めていけばよい」と伝える。

Cさんだけ面談するやり方は禁物。
あくまでも、職場の制度や仕組みとして話を聞くという姿勢を示すべき。

◆部下への歩み寄り必要

予兆の見極め方や対処法を知っても、
部下の様子がわからなければ意味がない。
神戸製鋼所の人事労政部の北村彰浩・安全健康グループ長は、
毎週月曜日の朝、部下5人を集めて30分程度のミーティングを開く。
「とても楽しそうだね。今度はどこに行くのかな」
話題は仕事だけでなく、プライベートにも及ぶ。

北村さんは、5人全員が発言するように仕向けている。
言葉や表情から、何に悩んでいるのかを探るのが狙い。
「問題が小さいうちに気づけば、先輩として助言できる」

信頼関係が構築できれば、若手社員から話しかけてくる例も。
北村さんの上司の小山雄司課長も、
「こんなことを悩んでいたんだという発見もある」とミーティングの効用を説く。

JTBの人事企画部マネージャーの田村敦さんも、
意識的に部下とコミュニケーションを取るようにしている。
簡単な書類でも印刷して手渡すなどして、
言葉を交わす機会を多くしている。
部下の話を謙虚に聞くようにも心がけている。
「我々の価値観を押し付けても、意味がない」

自分1人で抱え込んで、悩みを深めてしまう若手社員もいる。
田村さんや北村さんのように、上司から歩み寄る姿勢が欠かせない。

リンクアンドモチベーションの水谷健彦取締役の話

社員が心の病になってしまうと、その組織は大きな戦力ダウンに。
不景気で、各社とも現場の人員を最小限に切りつめている。
ストレスへの抵抗力を高めるとともに、
心の病にならないようにすることが大切。

心の病は、誰もがかかる可能性がある。
リーダーは、1日数分でも意識的に時間をつくって
部下とコミュニケーションを取り、少しずつでも
ストレスの種を発散させていくことが必要。
不運にも発症してしまった場合は、
医者の診断やカウンセリングをすすめることも上司の重要な役割。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090602.html

0 件のコメント: