2009年6月15日月曜日

職員の力(8)研修重ね「支え手」自覚

(読売 6月6日)

職員研修が、大学と地域を融合させる。

山形大学の一室では、十数人の学生と教員、職員が
ホワイトボードの前でひざ詰め議論を交わしていた。
「庭を使えないかな」、「雨が降ったらどうするの」

学生や教職員が、4年前から参加する国際交流行事について、
いかに盛り上げるか、どうしたら町の活性化につなげることができるか、
知恵を出し合っているのだ。

年4回開かれるこの行事の開催地は、
大学から車で30分以上かかる山形県河北町。
交流のきっかけは、同大が2003年に始めた
スタッフ・デベロップメント(SD)と呼ばれる職員研修。

3人程度の職員チームが市町村と協力して、
地域と大学の交流を図る。
机上の空論に終わらせず、成果まで求める――。
同町との交流を任された同大職員の山川正敏さん(35)は、
「行ったこともない町。どうなることやら」と、不安でいっぱい。

町職員と話し合ううち、町が国際交流に力を入れており、
関連行事に三上英司・同大准教授(47)がかかわっていることを知った。
三上さんは三上さんで、多くの学生を参加させたいと願いながら、
移動手段がないのに困っていた。

山川さんは大学にかけあい、町と大学を結ぶバスを出してもらうなど
するうち、町と大学のパイプは太くなった。
「職員なのに、学内を知らない自分、学内の分断ぶりにあきれた」

山形大で、大学の枠を超えたSD「職員サミット」1回目が開かれた。
提唱したのは、桜美林大学大学院で職員養成の授業を担当する
高橋真義教授(62)。

多様な学生をきちんと社会に送り出すには、
柔軟な発想と演出のできる「プロデューサー職員」が不可欠。
「職員は大学を支える大黒柱だという気概を持って」と熱っぽい。

自分の大学に誇りを持ってほしい。
サミットのメーンは、「大学自慢」コンテスト。
昨秋は山口大で開催し、今年は芝浦工業大が舞台となる。

山形大の地域交流事業は、河北町以外でも続いている。
県北部の新庄市など8市町村との連携も。
少子高齢化を抱える地域に学生を送り込み、
現地体験を通して学ぶ授業や課外活動を行っている。

「継続することが重要だが、難しい」と話す担当の小田隆治教授(54)は、
山形大だけでなく、年間20を超える大学で研修を指導。
大きな阻害要因は、「大学組織の不健全さ」
前例踏襲、職員の頑張りを認めない、“出る杭”をやたら打つ。
「ダメな組織で、職員だけ研修しても根付かない」とため息をつく。

職員の変革を求める大学自身が、組織としてのありようを問われる時代。

◆スタッフ・デベロップメント

職員の資質向上・能力開発のための組織的な取り組み。
研修や講演会などを行う大学が多い。
教員の資質向上のための組織的な取り組みは、
ファカルティー・デベロップメント(FD)と呼ばれ、
大学設置基準の改正で昨年4月から大学に義務づけ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090606-OYT8T00233.htm

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