2009年6月18日木曜日

星空に学ぶ(1)好奇心育む「宇宙の学校」

(読売 6月9日)

宇宙を切り口に、子どもの好奇心や想像力をふくらます試み。

体育館の天井に向けて突き出された棒の先の箱から、
シンジュという木の種に似せた折り紙がひらひらと舞い降りてくる。
「うわぁーっ」と、歓声を上げて手を伸ばす子どもたちと、見守る親たち。
講師の遠藤純夫さん(69)が、「よく見てくださいね。
種は、こうやって地上にばらまかれるんですよ」

国分寺市で開かれた「宇宙の学校」。
主催したのは、NPO法人「KU―MA(子ども・宇宙・未来の会)」
宇宙航空研究開発機構などで、宇宙の開発や研究に携わってきた
科学者や、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などの作品で著名な
漫画家の松本零士さん(71)ら、有識者により昨年6月に設立。
遠藤さんも理事を務める。

KU―MAが各地で開く宇宙の学校の対象は、
幼稚園児から小学校低学年までの子どもとその保護者。
プログラムは、家庭学習と、地域の公民館や科学館を会場に
大がかりな実験・工作を行うスクーリング数回で構成。

KU―MA会長で、元宇宙機構執行役の的川泰宣さん(67)が、
「宇宙は、好奇心や興味を引き出すための入り口に過ぎない」、
家庭学習や実験、工作の内容は様々。
家庭学習では、「水に浮くもの沈むものを見つけよう」、
「海水から食塩を取り出そう」、「つる植物の観察」など、
宇宙機構が作成した28種類のテキストをもとに学ぶ。

実験や工作では、張り合わせたゴミ袋の中に温かい空気を入れて
浮かせる熱気球、ビニール袋をふくらませて飛ばすロケットなど
宇宙を連想させる実験から、地球上の動植物や自然現象などを、
幅広く取り上げる。

シンジュやラワンの種の模型飛ばしのほか、
風を知るためのかざぐるまづくり、
海の生物を知るための星砂探しが行われた。

親子で取り組むことで、家庭の中で科学への関心をどんどん広げて
もらうのも大きな狙い。
子どもだけでは作れない、解けない課題を準備し、
親子で解決に取り組まざるを得ない状況にあえて追い込んでいる。

参加した国分寺市の主婦、永井英子さん(37)は、
「学校ではあまり教わらないことや、保護者だけでは教えられない
専門的なこともできるので参加。
娘にはいろんなことに興味を持ってほしい」

同市立第五小学校2年生の福田周真くん(8)と参加した
父親の稔さん(38)は、「家でも話が広がりそう。
かざぐるまくらいなら、子どもよりうまく作れるので、
親としての威厳も保てます」

的川さんは、「この学校は、家庭と宇宙、家庭と科学を結ぶのが目的。
家でも、親子で日常的に宇宙や科学を話題にしてくれれば、
探求心が育つのでは」と期待。

家庭での親子の会話が、宇宙への大きな一歩になる日が来るかも。

◆宇宙航空研究開発機構

宇宙・航空の基礎研究から技術開発・利用までを担う独立行政法人。
大型ロケット「H2A」の打ち上げ時の安全管理、
国際宇宙ステーションの開発・運用のほか、宇宙飛行士の養成。
宇宙を題材にした教育活動も行っている。

◆世界天文年の今年、日本では皆既日食…

今年は「世界天文年」。
イタリアの科学者・ガリレオが、望遠鏡で天体を観察して400年、
国連などが節目の年として指定。
この記念すべき年に、日本では珍しい天文現象が出現。
7月22日、トカラ列島や種子島などで「皆既日食」を観測でき、
天文ファンの期待を集めている。

宇宙では今、宇宙飛行士の若田光一さん(45)が、
日本人で初めてとなる長期滞在生活に挑戦中。
国際宇宙ステーションでの滞在期間は、間もなく3か月を迎える。
今月中には地球に戻る予定。

宇宙や天文関連での大きな出来事が続く中、
国内外の宇宙天文施設では、星の観測会や宇宙関連の
展示会の開催や、民間団体や教育機関による宇宙天文教育の活動など、
関連イベントも広がっている。

国立天文台で、宇宙教育を担当する元高校教師の
縣秀彦准教授(48)は、「宇宙は自然のすべてを包含する。
理科の勉強だけではなく、芸術の題材にもなり、非常に間口が広い。
だから幅広い人の関心を呼び、興味を引き出すことができる」

肝心の教育現場では、深刻な問題。
小中学校や高校の授業では、宇宙や天文を扱う授業が減り、
これに歩調を合わせるように専門教員も少なくなっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090609-OYT8T00323.htm

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